12月も後半に入り、今年も残すところ半月、早いです。さて今回は久しぶりの建築巡り。国立新美術館を紹介します。11月に所用で東京へ行きまして、これはその帰りに少し寄った時のものです。息抜きとしてご覧ください。
国立新美術館は2007年に開館した美術館です。延床面積は5万弱で、これは日本国内では最大です。最寄りは乃木坂駅。六本木も徒歩圏内です。
設計者は愛知県出身の黒川紀章です。メタボリズム運動を主導した建築家の一人です。メタボリズムとは、簡単に言えば、社会の変化に合わせて建築の姿も有機的に変化、成長させるという考え方です。1970年ごろに隆盛し、中銀カプセルタワー、京都の国際会館、山梨文化会館など各地に様々な建築が作られました。それらの見た目は特徴的で、建築が人間や社会と一緒に成長していくようなみなぎる力強さというか、新陳代謝のエネルギーのようなものが感じられます。
それ以前はモダニズム運動が盛んでした。ヨーロッパの重厚な、悪く言えば重苦しい伝統的意匠を超克し、モダニズムでは鉄やガラスを用いたシャープなスタイルが広まりました。そういった工業製品を使うことで、合理的で機能的な建築をつくるのが主流になったのです。ル・コルビジェはその代表的な建築家の一人。はるか前に紹介した国立西洋美術館のシンプルなファサードと比較するとその違いがよくわかるかと思います。
その後ポストモダンなど運動がいろいろあるのですが、メタボリズムは、モダニズムのような建築の合理化や均一化に対する、黒川紀章が考えた一種のアンチテーゼと言ってもいいでしょう。
コンセプトは「森の中の美術館」です。周辺には植栽も多く建物が自然に溶け込んでいます。透明感のあるガラスカーテンウォールは波のように美しい曲線を描きます。そこに円盤形の庇と円錐形のエントランスが加わって特徴的なファサードを生み出しています。
内部の様子です。大きな吹き抜けを持つアトリウムが連続していて非常に開放感があります。円錐を逆向きにしたような構造体があり、有機的というか、何か動き出しそうな、そんな雰囲気が感じられます。
この円錐の上はカフェやレストランになっており、上質なひとときを楽しむことができます。
この円形のレイアウトも明らかに合理的ではありません。機能を最優先するなら矩形になるでしょう。しかしそういった非合理的な空間のほうが、ワクワクや非日常を感じることができますね。
何と言ってもこの曲線とうねりが特徴的(メンテナンスは大変そうですが・・・)です。有機的というか生命力を感じます。日射熱や紫外線をカットする環境的配慮もなされています。
こちらは3階の廊下です。展示室の面積は14000平米で、これは国内最大級です。12の展示室、アートライブラリー、講堂、研修室等が入っています。
実は国立新美術館には所蔵しているコレクションがありません。展示は巡回している企画展などで回しています。
時間があまりなく、そもそも私は中の美術品などを見てもあまりわからないので、展示室には入りませんでした。
地下にはお土産コーナーなどがあります。ジャンルやスタイルの壁を超えて、世界中のアーティストやデザイナーたちのグッズが揃います。
波打つガラスからは外の光が入ってきます。特に太陽高度の低いこの時期にはやわらかな陽の光が建物内に模様を創り出すのもポイントです。
いかがでしょうか。美術品に興味がなくても、いや建築に興味がなくても、この雰囲気を味わうだけで来る価値があると思います。今はコロナでちょっと行きにくいですが、また落ち着いたらぜひ行ってみてください。