建築探訪 海の博物館

さてGWです。来週は5連休ですね。休みをつなげてもう少し長い人もいるかもしれません。ただし航空券の価格は高騰しており良好やレジャーには逆風ですね。

今回は久しぶりの建築巡りと言うことで三重県にある海の博物館を紹介します。近場で行けるので飛行機が高くて遠出はちょっと、という方にもおすすめです。

設計者は内藤廣。当ブログでは初めて紹介する建築家となります。その中でもこの海の博物館は内藤廣が日本建築学会賞を受賞するに至った代表的な建築であり、今でも氏の代表作とみなされています。

所在は水族館で有名な鳥羽市です。バスでアクセスできますが本数が少ないので車がいいかもしれません。周辺には海沿いのドライブが楽しいスポットもいろいろあります。そこからやや陸側に入った高台に、海の博物館は建っています。

ちなみに鳥羽市は三重県の南の方にあるような気がしますがちょうど真ん中くらいです。熊野や尾鷲の方は思いのほか遠く、三重県は南北に非常に長いのです。金山も名古屋の南のターミナルと言われますが、ちょうど真ん中くらいですね。

ちょっと話がそれました。海の博物館はもともと市街地にあった収蔵庫を移転開業してできた建物です。以前の建物は収蔵品が手狭になっているほか、塩害による保存状態の劣化も問題になっており、それらを解消する新しい施設が望まれていました。

こちらが外観です。たいそうな博物館というよりは漁村にある舟屋のような外観です。周囲は漁村であるため、それらと調和するような意匠が選ばれました。

構造は木造とコンクリートのハイブリッドです。先述したように塩害が問題となっていたため、金属を使わない日本瓦の屋根となっています。

建物は1つではなく複数あり、すべて合わせて博物館を形成しています。展示がメインの棟もあれば保存がメインの棟、カフェがある小さな棟もあり、緑に囲まれた空間の中でそれらを渡り歩くのも楽しいです。

鳥羽市は昔から海とともに歩んできました。最初にも述べた鳥羽水族館があるほか、多くの海女たちが行っている真珠漁も有名だと思います。そういった豊かな恩恵をこの町にもたらしてくれる海について、さまざまなものを収集するのが海の博物館です。その範囲は水産業はもちろん、それを支える造船や、海に関わる宗教や民俗や文化、最近では海の資源保護や海洋汚染問題などさまざまなものがあります。

敷地内は写真のように比較的高低差がありますが、地形をそのまま利用しています。建物の異なる高さに出入口が設けられていたり、そこをうまく回遊させることで、来場者に展示を見てもらうようになっています。

中に入ってみます。こちらは鳥羽や志摩の人々の伝統、海産物、信仰と祭りなどを展示しています。海とともに生きてきた人々は、その恵みに感謝しするとともに、神が宿るとして畏敬の念をもって海に接してきたのです。

ここで目を引くのは天井です。大空間の展示スペースを実現するため、アーチ状の木材の架構とし、それを大胆に見せています。屋根にはトップライトを配置し、人工照明に頼らないやわらかな空間を作り出します。

コスト削減も海の博物館をつくるにあたっての大きな題目でした。さまざまなコストカット策が用いられていますが、中でも現場で使う鉄筋が手摺にそのまま使われていたのは驚きました。しかしその武骨な感じが逆に雰囲気にあっていていいと思います。

船の保存庫です。ここは昔使われていた船がたくさん置かれています。今の技術が発達する前は船は木でできていました。スギの木をメインに、ヒノキ、マツ、カシ、ケヤキなどで補った丈夫で速く走る船がたくさん造られました。

先ほどの棟はどちらかというと展示メインですが、ここは保存メインになっています。博物館は人々にテーマとなるものを見せる役割もありますが、それと同じくらい収蔵品を保存して将来につないでいくのも大切な役目です。

さて木製の船を保管するのに重要なのは湿度の調節です。木というのはあまり乾燥すると割れてしまいます。商業ビルなら湿度の調節は空調や換気機器を使いますが、そのような大掛かりな設備はデザイン上も費用上も不可能でした。そこで内藤廣は日本の伝統家屋で用いられた三和土を利用します。三和土は土、砂利、消石灰などをまぜて突き固めてできた素材で、調湿に優れています。船の博物館の雰囲気とも合っている三和土は、意匠計画的にも機能的にも適材適所と言えるでしょう。

ところで内藤寛といえば、実は名古屋となじみ深い、というかこれからなじみ深くなる建築家です。駅東広場改築のデザイン設計を務めるからです。今の案はいいと思うので、適材適所の計画で広場を設計、完成させてほしいですね。

建物の内部だけでなく、外部もこだわっています。中庭はきっちりした舗装ではなく石を敷き詰めることで自然のイメージを想起させます。歩いて楽しく感じられる建物の配置計画から、デザインや構造、そして外構計画に至るまで、非常によく作り込まれています。中庭は本当に心地のいい空間でした。

海の博物館はさまざまなイベントも開催しています。建物を飛び出して漁業体験をやったり、とれた海産物を料理する教室をやったり。建築物だけでなく、さまざまな交流を積極的に開催し、地域の人々とともに歩んでいくのが海の博物館なのです。

いかがでしょうか。海の博物館は、海とともに生きる人々の息づかいが分かる、建築的にもとても見ごたえのある博物館です。ぜひ行ってみてください。

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