建築探訪 猪熊弦一郎現代美術館

今回は久しぶりに建築めぐりの記事です。香川は丸亀にある猪熊源一郎現代美術館を紹介します。設計者は谷口吉生。昨年12月の訃報を聞いた時には驚きました。

実はこの美術館、四国遠征のときに行ったらまさかの休館日だったところです。三年の旅行記事に載せています。少し前にリベンジとして行ってきました。

四国遠征 瀬戸大橋を渡って

丸亀駅徒歩1分とアクセスは至便です。駅側に多くな門型のフレームをみせるファサードとなっており、駅前広場と一体化したようなランドスケープが特徴的です。

谷口吉生はモダニズムの代表的な建築家です。近代建築の5原則からはじまる合理的な建築スタイルです。当ブログで紹介した国立西洋美術館を思い出してもらえばよいでしょう。

谷口吉生は美術館が得意と言われています。豊田市美術館も彼の作品です。水や広場をうまく建築に取り込んだ美しい建物が多いと感じます。

中央に見えている黄色いのは「星座」というアートです。

内部は白基調の自然光を取り込んだ明るい空間となっています。建物は3層構造で、1階にはオリジナルグッズやカタログを販売するミュージアムショップ、2階には対照的なプロポーションをもつ2つの展示室、3階には天井高の高い展示室と屋上広場があります。

建物名にもなっている猪熊源一郎は丸亀市ゆかりの画家です。およそ2万点の作品を収蔵しています。展示されているのはそのほんの一部です。

谷口吉生は細やかな対話を繰り返し、猪熊源一郎が希望する空間づくりに努めました。猪熊源一郎現代美術館はいわば2人の芸術家による共作とも言えます。

谷口吉生はコンペを好まない建築家でした。ゆえに注目度狙いの派手な作品はあまりありません。どちらかというと地に足の着いた空間をつくり、それを丁寧に紡ぎだす印象です。

そんな谷口吉生の訃報を聞いた時はショックでした。後を追うように原広司も亡くなり、少し前を思い出してみれば槇文彦、もう少し前には磯崎新と、建築界の巨人が相次いでこの世を去っていき寂しい限りです。

屋上広場は「カスケードプラザ」と呼ばれます。心地よい水の音と開放的な空を感じることができる休憩スポットです。その横にはおしゃれな「カフェレストMIMOCA」があります。

美術館の南側にある大きな吹き抜けです。広場側からは大階段で上がれるようになっており、奥に向けて広がっていく空間は人々を内部に誘い込みます。

建物の模型です。かなり縦長の建物であることがわかります。限られた敷地に美術館らしい吹き抜けの大空間を作ったりしながら必要な機能を配置しつつ、十分な安全性を確保できる構造を成り立たせ、かつ来場者が快適に感じる照明や空調も計画するというのは大変難しいことです。

愛称の「MIMOCA」は「Marugame Genichiro-Inokuma Museum of Contemporary Art」の略となっています。

猪熊源一郎現代美術館には丸亀市立図書館が建物の一角に入っています。南側からアクセスすることができます。利用は上々だそうで、美術館と図書館の相乗効果もあって、多くの人でにぎわっていました。

やはりMIMOCAの一部ということで、公共図書館ながらデザイン性はかなり優れていると思います。デザインだけでなく蔵書も数十万冊があり、なかなか充実しています。

駅前立地を生かし、夜は20時までやっているそうです。公共図書館ではあまりない気がします。仕事帰りの人なども立ち寄れるのでとてもいいなと思いました。

いかがでしょうか。猪熊源一郎現代美術館は巨匠、谷口吉生と丸亀出身の芸術家によるすばらしい共作です。駅からもすぐ。ぜひ行ってみてください。

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