建築探訪 名護市庁舎

今回は久しぶりに建築巡りと行きたいと思います。紹介するのは沖縄県名護市にある名護市庁舎です。行ったのはちょっと前ですが前から書きたいと思っていたので今回書いていきます。

名護市は沖縄本島北部の都市です。太平洋側にも東シナ海にも面しており、この建物があるのは東シナ海側です。美ら海水族館もここから比較的近いです。

こちらが外観です。市庁舎には見えないのではないでしょうか。象設計集団の作品です。

これは沖縄の風土に適応しつつ、市民に開かれた庁舎をつくろうと計画されたものです。特に設計条件として重視されたのが、省エネや気象条件を考慮した自然適応型の建築です。そのため空調設備は導入せず、風の道というダクトで海風を居室に取り入れる計画でした。

今でこそ自然環境を利用したパッシブ型の建築が流行ってきていますが、こちらは1981年完成なのでものすごく先取りしています。外観を見ても、沖縄の暑い気候に対応するための大きな庇、海が近く海風が卓越することを利用した風通しの良い構造など、その様子が見て取れます。

北側にはパーゴラ状の空間があり、その横にある芝生広場と一体的に誰でも入ることができます。市庁舎というか役所の建物というと閉ざされた無機質な建物というイメージがあり、ここ最近でようやく市民に開かれた的なことを謳う建築が増えていますが、名護市庁舎は1980年代初頭から入りやすい開放的な空間づくりをしていました。

ここはアサギテラスと名付けられていて、沖縄では4つの柱と屋根で構成された壁のない空間「神アサギ」をモチーフとしています。神アサギは神が下りてくるとされる神聖な空間です。

アサギテラスにはブーゲンビリアが生い茂っています。コンクリートの力強い建物と絡まる姿は、植物だけでなく、建築そのものにも独特の生命力を感じさせます。

これ以外にも建物のすぐそばには南国の植物がよく成長しており、遠景で見ると密林の中に現れる古代遺跡のようにも見えます。

ブロックを積み上げたような外観も特徴的です。本州とは比較にならないほど強い台風への対策、またブロックの原料となる砂が手に入りやすいことも一因です。このように名護市庁舎はぱっと見の外観もさることながら、気候、風土、地域性に着目しても実に「沖縄らしい」建築と言えるのです。

よく建物の入口などに定礎の板があり完成年が書いてありますが、名護市庁舎のには「地域の礎たらん」の文字があります。周辺の環境を徹底的に読み解き、地域と一体となった建築を作るという、象設計集団の強い設計思想が表れています。

単純にワクワクもあります。この建物自体が迷路というかアスレチックのようで、この先はどこにつながっているのだろう、と外部空間を歩くだけでも楽しいです。

ちなみに近年ではこの建物にも空調設備が導入されています。さすがに近年の地球温暖化による酷暑は昔とは同列に扱えません。仕方ない部分もあると思います。

こちらが入口です。中身は普通の庁舎機能です。一部吹き抜けになっていて開放的です。

そんな名護市庁舎ですが、なんと最近老朽化による解体が検討されているそうです。新庁舎の建設や時期はまだ未定ですが、先ほど書いたように名護市庁舎は、意匠も構造も環境も「沖縄らしさ」を体現した素晴らしい建築であり、日本の公共建築の傑作といえるので、もし本当になくなるとしたら実に残念なことです。少しくらいの金額なら寄付する用意があります。

おまけです。首里城にも行ってきました。一番メインの建物は2019年に燃えてなくなってしまい、私が行ったときはその壮麗な姿を見ることはできませんでした。現在は再建工事が行われていて2026円に完成する予定です。

こちらは守礼門とよばれる門です。2000円札にも描かれています。ちなみに日常で2000円札はまず見ませんが沖縄では一般的に流通しています。

最後は沖縄の海です。これは美ら海水族館から見たもので、当然と言えば当然ですが沖縄の意味は本当にきれいでした。

また日本ではめったに見ることのできないジンベエザメにも出会えます。規模は名古屋港の方が全然上なのですが、このきれいな海と体験はここでしか味わえません。

いかがでしょうか。名護市庁舎は沖縄らしさが詰まった素敵な建築です。また美ら海水族館など周辺に観光施設も多数。ぜひ行ってみてください。

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