SRT名駅ー栄ルート 連接バスで2026年先行開業

12月6日に開かれた名古屋市の都市消防委員会で、新しい路面交通システムとして検討しているSRTを2026年までに開業させる方針が明かされました。同年までに開業するのは名古屋駅と栄を結ぶ東西ルート(広小路通)のみで、都心と名城公園や大須などを結ぶ周回ルートはもう少し後の時期になるとのことです。

SRTは都心部の渋滞や混雑対策として、また観光客などがわかりやすく都心部周辺を回れるような交通手段として、市が以前から検討しているものです。Smart Roadway Transitの頭文字です。詳しくはこちらをどうぞ。

名古屋駅ー栄間 SRT試験走行を実施

先日は、連接バスを用いたSRTの試験走行が行われました。導入に向けて準備が着々と進んでいるようです。新しい路面交通システムにより、都心の賑わい向上が進むいいですね、と言いたいのですが、私はSRTはちゃんとできるのか最近懐疑的になっています。その辺を少し書きます。

各種報道を見る限り、名古屋市が2026年までに整備することは名古屋駅と栄の間で連接バスを導入することです。それだけです。もしそうなったらSRT構想は当初に比べて大幅に退化してしまったことになります。

SRTは、流線形などの未来的で先進的な車両を導入し、観光客が乗ってみたいと思えるような路面交通だったはずです。また、専用レーンを導入し、定時性を確保することも重要課題です。街のアイコンとして、おしゃれで洗練された乗降場を整備するという話もありました。これらは本当に実現するのでしょうか。今の動きを見ているとかなり怪しいと思います。

当初のイメージはこれです。ただ広小路通に連接バスを入れただけでは目指していたSmart Roadway Transitとは言えないと思います。Saenai Rensetsu bus Transit(さえない連接バス交通)が関の山です。

今、全国の大都市で連接バスを導入してBRTを名乗る事例が増えています。しかし海外のBRTと比べると、専用レーンや優先信号がなかったり、乗り場が他のバスと兼用だったり、運行本数が少なかったりなど、大きくグレードが下がるものが多いです。

一方名古屋市では40年以上も前から、基幹バスという先進的なシステムを導入しています。おそらく国内のバスシステムで最も海外のBRTに近い水準でしょう。ゆとりーとラインもスペックの高いBRTと言えます。

そんなバス先進都市の名古屋市が導入する新しい路面交通が、他の大都市の「自称BRT」と同じ程度のものになりそうということを私は危惧しています。むしろ今までのBRTを超えたシステムとしてSRTの名前を使うのに、内容が大したことなければ、ただただ残念です。

停留所をどうするのかも懸念点です。名古屋駅と栄はターミナルになりますが、名駅で言えば、15mくらいある連接バスはゲートタワーのバスターミナルには入り切らないと思います。となるとミッドランドスクエアの前あたりで乗降になるのでしょうか。名駅では飛翔撤去して広場の拡張も行われているのですから、その計画としっかりリンクさせて乗り場を整備してほしいです。

栄の方はまだ道路状況に余裕がありそうです。ただしこちらも久屋大通公園南エリアの改修がこれから行われるので、その一部に専用の停留所を設けるなど、とにかく現状進んでいる地上整備と関連付けて進めてほしいです。

それと広小路通は交通量が多い割に道路が狭いので錦通でもいいのではと思います。それならバスレーンの整備などやりやすいと思います。洗練された乗り場の整備、優先信号の導入も検討すべきです。

もちろん先進的な車両はまだ開発中で、これから投入されるかもしれませんし、開業後の状況を見ながら専用レーンの設置が可能か検討して進められるかもしれません。ただしそれでも連接バスを導入して停留所も中途半端で終わり、というのは勘弁してほしいです。バス先進都市の名古屋市として、他の「自称BRT」とは一線を画す高いレベルの新しい路面交通を実現することが重要です。

まだ開業予定まで3~4年程度の時間があります。そのあたりをしっかり詰めて、誇らしくSRTと呼べるようなシステムの完成を待ちたいと思います。

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コメント

  1. 常盤 より:

    26年度先行開業という報道を聞いた時、単に車両開発が間に合わないので当初は連接バスを用いるだけであり、私はてっきり専用レーンや停車場は設けられるものだと思い込んでいました。それが単に連接バスを走らせるだけのものであればたしかに寂しいですね。

    ルートは錦通でもいいと思いますが、たぶん広小路でしょうか。
    もし本格的にSRT化されるなら、結局ルネサンス計画で示されたのと同様に一般車両は片側1車線化になるのかもしれませんね。

    いずれにしてもSRTと呼ぶのにふさわしい交通システムの実現を強く望みたいです。

  2. 藤ノ棚駅 より:

    イメージ図はおしゃれにしてましたが、やることとしては基幹バスレーンの延長、バス床面と同じ高さの停留所整備、新車両の開発、歩行者空間の拡大とそんなに特別なことはないよなぁと感じます
    これを実現するためには市街地への自動車流入の抑制がセットでなければ意味がないと思うのですが策はあるんでしょうかね

  3. caco より:

    https://nagoya.gijiroku.com/g08_Video2_View_s.asp?kaigi=0&NitteiID=1170&SrchID=1525

    上記の委員会録画を聴く限りでは、どうやらアジア大会に間に合わせる
    ために、“「当初運行(暫定運行?)」”として
    まずは既存の連接バス車両の運行となるみたいですね…

    そこから周回ルートの運行等と併せて、段階的に車両開発や沿道整備等も行っていくようなニュアンスの説明をされているように感じます

    (市議からも自動運転技術等、迅速かつ積極的に導入していくよう
    釘を刺されているようですね…)

  4. 住都局 より:

    広小路ルネッサンス構想は『歩道を拡幅し、車道を2⇒1車線にする』計画でしたが、地元住民や商店街から猛反対され、頓挫してしまった計画ですね。
    あれから15年近く経つとはいえ、一度撤回した計画を復活させるのはかなり難しいと思しそうです。
    そもそもSRTは見た目のインパクト以外に連接バスである必要性がほぼ感じられないため、専用レーンや停留所も整備されず、ただ連接バスを走らせるだけになってしまいそうな気もします。