愛知県は6月24日、アジア大会選手村跡地の土地利用について、契約候補者を決定したと発表しました。候補者は中部電力を代表とするグループで、中電不動産、日本エスコン、マザーズ、矢作地所、同朋学園、大和ハウス工業から構成されます。
現在の競馬場は弥冨トレーニングセンターに移転します。アジア大会の選手村はその跡地に整備されます。今回決定したのはさらにそのあとの土地利用です。
その提案内容をさっそく見ていきましょう。中部電力のグループが提案したコンセプトは、多様な人々がつながり、共につくる次世代型のまちづくり「ウェルネスアソシエーション」です。
それを支える7つの要素で「多様な人々のつどい」「共生と共助」「こころとからだの健康」「安心安全で快適な暮らし」「持続可能なまち」「新しい技術、サービスの導入」「地域の魅力向上」が謳われています。どのような案でしょうか。
引用愛知県 第20回アジア競技大会選手村後利用事業 契約候補事業者の決定について(PDFファイル)
こちらが地区計画です。まず敷地中央にL字のシンボルロードが整備されます。中央に防災公園、北側が賑わいゾーン、西側の一部が住宅ゾーン、南側が学びゾーン、南東が場外馬券売り場となっています。
まず全体的な感想は、コメント欄にあったように私もそんなもんかという感じですね。堅実と言うか無難と言うか、インパクトは薄いです。
順番に見ていきましょう。北東の交差点に面する部分が日本エスコンの商業施設。港区は大型SCが過当競争になっているため、200店超の巨大モールはできても共倒れしてしまいますが、この規模感ならそれほど問題なさそうです。
中央の住まいゾーンには中層住宅、分譲戸建て住宅、福祉施設などを整備。これが中電不動産や大和ハウスが担当する部分になりそうです。
そして南西側が同朋大学です。稲葉地のキャンパスってまだ新しいイメージがあるのですが移転するみたいですね。大学ができると若者が集うことになるのでその点はよかったです。
南東側には場外馬券売り場ができます。率直な感想ですがこれいるんですかね。何らかの都合でこうなったのだとは思いますが、私は疑問です。それならいっそのこと公園(と飲食などの低層商業を少し配置)にした方が、東の土古公園、西の大学と連続性ができ、市民も入りやすい空間になると思うのですがね。
朝日新聞によると、グループ内でも「ギャンブル施設の隣に教育施設を設けるのはおかしい」との批判が出ていたり、県と市にも「場外馬券売り場を中心としたまちづくりのメリットは何か」などと開発理念をただす公開質問状が届いているそうです。
パースで見るとこんな感じです。左上が商業施設、右上がマンション、左下が東海通り沿いの低層商業施設、右下が福祉施設です。
まちびらき後はこれらの施設が連携してエリアマネジメントや街の価値向上に向けた活動を行うことになっています。
また中部電力が事業者ということで、新しい街はエネルギーの観点からも持続可能性のあるものになることが期待されます。
ちょっと気になるのはもう1つの候補者の提案ですね。今回は中部電力などの案に決定しましたが、実はもう1つのグループも応募してきていたようで、その内容が気になります。
資料には「先端技術を駆使した生活の質向上に視点を重く置いた未来型の魅力あるまちづくりである。まちづくりのコンセプトは、実現されれば夢があり、新しいライフスタイルの提案を評価」とあり、この一文だけ見ると現在の無難なものよりワクワクを感じます。
ただ「実現に向けた検討状況や実施体制に不明確な点があり、工程計画にも懸念が残り、計画の実現性の面で課題がある」とも書かれています。いくらワクワクでも実現できなければあまり意味がないので、この点で落選したのはちょっと残念でしたね。
最後に今後のスケジュールですが、2022年度に基本協定と契約締結、2026年にアジア大会が開催、その選手村が解体され2028年ごろにまちびらきとされています。
新しい街ができるのを楽しみにしたいと思います。