三の丸エリアの再整備を考える

今回は正月恒例の考察記事です。テーマは三の丸エリアの整備。当ブログでは今まで扱ってきませんでした。他のブログやサイトも触れているものは少ないと思います。しかし、三の丸エリアの再整備は今後の名古屋の新たな都市景観を創るとともに、観光力を大幅に底上げできるチャンスを秘めていると感じています。若干夢物語的な部分もあると思いますが、正月ということでそこは大目に見てください。

三の丸は名古屋城の南に位置するエリアです。市役所、県庁、裁判所などが立ち並ぶ官庁街、東京で言えばさしずめ霞が関といったところです。

この三の丸エリアにはどんなイメージを持たれる方が多いでしょうか。もしくはどんな目的で来訪するでしょうか。

先日、名古屋初のラウンドアバウトが導入されて少し話題になりましたが、写真のように基本的にはかなり殺風景です。ふらっとこの辺を歩く人もほぼいないでしょう。逆にラウンドアバウトくらいしか話題にならない(もしくはリニアの非常口工事くらい)エリアです。

建物もいかにも役所感のするものが多いです。画一的でお堅い感じです。道路幅はかなり広く、歩行者にとってはやや不便な車優先型の街区になっています。

別にそれが悪いとかいうつもりはありません。官公庁地区は非常に重要な役割を担っています。しかし、再整備によってはかなり化ける可能性があるのではないかと思っています。

特に三の丸エリア東側は久屋大通公園の北端から目と鼻の先。ここを再整備することで名古屋城と栄地区の回遊性を大幅に向上させることができます。

こちらは三の丸再整備を目指す団体が出している資料です。私の案はこれとおおむね一致です。具体的には

・久屋大通公園を延長する形で広めの歩行者デッキなどを名古屋城に向けて整備
・官庁建物は集約、高層化。市役所、県庁の向かい側を低層店舗や賑わい広場に
・市役所と県庁は外装はそのままで、中身を資料館や商業店舗にリノベーション

順番に見ていきましょう。まず、久屋大通公園と名古屋城方面をつなぐデッキです。これによって栄地区と名古屋城地区の回遊性が大幅向上します。先ほど書いたように久屋大通公園の北端から三の丸エリアの一番近い部分までは100mちょっとの距離なのです。

なお、これはリニューアルによって久屋大通公園が生まれ変わったからこそ有効な施策です。以前の久屋大通公園は人がほとんどいなかったので、回遊性以前の問題でした。久屋大通パークになって人の流れが外堀通のあたりまで形成できたからこそできる計画です。

デッキと書きましたが回遊性向上に資するものならなんでもいいです。ただ、地下道ではちょっと暗いですし、外堀通りを横断歩道で超えるとなると(スクランブルのような歩行者優先にしても)心理的に行きにくくなると思うので、デッキとしました。造るならなだらかな傾斜で自然地形のような意匠のもの、そして幅の広いものが望ましいと考えます。それを渡るのが心理的に負担にならない形にすべきです。

注意点としては、現在の久屋大通パークは北側へ行くほど観光色が薄まり、市民の憩いの場としての存在になっているので、賑わいばかりでなく、そういった市民のための存在としての空間を残すなど、動線を分離するなどを工夫は必要です。

次に賑わい広場の整備です。先ほどのデッキを伸ばしていくと現在の市役所西庁舎や県自治センターのあたりに突き当たりますが、これらの建物を解体し、低層店舗やイベント広場を整備します。場合によってはその一つ南のブロックの県庁西庁舎も解体します。

三の丸エリアの建物は老朽化が進んでおり、どのみち再整備が必要です。そのためこの機会に建物を集約、高層化するのです。空いた場所は緑地帯にしたり、先ほどの広場や賑わいのスペース、SRTの乗降場にします。広場は防災という点でも非常に有効です。

上のパースでは集約建物が横長の2棟になっていますが、今の市役所や県庁、さらに他の建物を集約してこの規模で済むでしょうかね?テレワークなどが進んでももっと床面積が必要な気がします。思い切って高層にしてもいいと思います。

高層化による景観の破壊が指摘されますが、安易な高さ規制による弊害も忘れてはなりません。例えば60m規制があったとします。すると床面積を稼ぎたい事業者は、縦には伸ばせないので壁のような圧迫感のある横長の建物を作ります。他の事業者もそれに追随し、最終的に59.98mくらいの制限いっぱいの建物が増殖します。結果、横長で敷地を消費するので意外と地上は狭く、横長建物に囲まれた息苦しい空間が出来上がります。

建物は思い切って150mくらいの高さでもいいでしょう。それが数棟建つイメージです。(建て替えが完成したら)伝統的な木造の大天守閣と近代的な高層ビル群の対比で、名古屋の新しい都市景観となることでしょう。

ただ矛盾するようですが、とにかく高層化すればいいというわけでもありません。ナゴヤキャッスルがある西側、住宅街の北側、学生街と住宅街となる東側は、高さ規制を継続したほうがいいと思います。三の丸エリアでも建て方や配置、デザインによっては景観が乱れてしまう恐れがあるため、慎重に集約高層化をしてほしいです。

さらに、空いたスペースにMICE関連施設を整備するのも有効だと思います。展示場はセントレアと金城ふ頭がありますから、会議場をメインに整備します。周辺には名古屋城という観光資源や豊富な宿泊施設がありますし、アクセスもまずまずで、好条件がそろいます。

そういえば最近、2023年のG7誘致に名乗りを上げるという記事を見かけました。会場は熱田の国際会議場です。市としてはそちらの改修、拡張を計画しているようなので、三の丸MICEは難しいかもしれませんが・・・

ちなみにG7に関しては無理に誘致しなくても、という感じがします。その労力を名駅再整備、笹島地下道、柳橋駅、栄再開発などに振り向け、都心の整備を急いでもらいたいです。そもそも前回伊勢志摩なのでまた東海地方ということはあるのでしょうかね、サミットはそういうのは関係ないのでしょうか?

最後に市役所と県庁。こちらは観光用の建物としてリノベーションします。昨年、市役所の本庁舎を訪問する機会がありましたが。迷路のようで迷いました。運用上も相当使いにくいのではないでしょうか。そのため今の機能は先ほど述べた新ビルに移転し、使いやすく改装して店舗や資料館に転用します。ホテルでもいいと思います。

帝冠様式の非常に立派な建物、しかもそれが2つも並んでいるなど、普通に考えればそれだけで第一級の観光地になり得ます。しかもそれが栄地区と名古屋城の中間に位置しているのですから、これを生かさない手はありません。

これによって、名古屋城自体は立派だが周辺に観光施設が少なく滞在時間が短くなりがち、という問題が解消すると思います。金シャチ横丁でだいぶ良くはなりましたが、歩行者の賑わい空間が拡大し、市役所と県庁が観光客向けの建物になるのは、それよりさらにインパクトがあると思います。

駅名も市役所から名古屋城に変わるようですから、ちょうどいいですね。

ということで、三の丸地区の再整備計画でした。ここを整備すれば名古屋の観光力がさらに高まり、新しい都市景観の創造にもつながると思います。

2~3年程度でできることではありませんが、SRTが完成する2027年、名古屋城木造再建が完成する2028年、あるいはリニアが開業する2030年(?)あたりを目途にやってみてもいいのではないでしょうか。久屋大通パークができて人の流れができ、名古屋城周辺の施設が大きく変わり、地下鉄の駅名も変わろうとしている今は、まさしく大きなチャンスだと思います。少し夢物語な部分もありますが、ぜひ検討してほしいものです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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コメント

  1. 手羽先うまい より:

    共感しました。三の丸エリアをいじれば名古屋はさらに化けると私は確信しています。この際、市役所や県庁は名駅か栄に超高層ビルを建ててそこに機能を移した方がいいかも。

  2. 権兵衛 より:

    提案、とても素晴らしいです
    名古屋は観光地がないなんていうけど、モノ自体は良いもの持ってると思うんですけどね
    三の丸のあたりは行政機関集約してまとめれば土地は空けれると思います
    古いビルに外側から耐震補強してるような、言葉は悪いですが見栄えの悪いビルが多いですし

  3. より:

    名古屋官庁街、再整備へ 三の丸地区、今月に提言書公表 https://www.chunichi.co.jp/amp/article/180060

    新年早々ビックニュースが飛んできました。
    2021年から三の丸地区再整備が動き出すそうです!

  4. ノボール より:

    提言:名古屋三の丸地区再整備の今後の展開に向けて ~ポスト・リニア時代の核心を展望する~
    https://www.nup.or.jp/nui/user/media/document/investigation/sannomaru/sannnomaru_kousou2.pdf

    これが叩き台。早く具体化してスケジュール立ててかないと、手遅れになります。
    総花的な規制緩和というチグハグな土地利用計画ではなく、地理的特徴と、しっかりとした狙いをもって整備計画を立てないと金の無駄遣いになるだけ。
    因みに、今の名古屋市はこのグランドデザインを描けないので、前に出るべきではない。

    私のこの提言を踏まえた過去のコメント

    ナゴヤキャッスルについては、天守閣が建ったところで、超高級ホテルの需要には大差が無いと思いますので、早く建ててほしい。
    先のG20外相会合でも分かったけど、都心部のホテルではあれ以上の会議は開けない。警備面での負担が大きすぎる。
    それに対して、ナゴヤキャッスルはまだ警備面で有利。そして、財界から提案のあった、三の丸再整備を真剣にやるべき。
    文化財にもなっている県庁や市役所はホテルに転換。役所関係は域内統合して、さらに会議場主体のMICE施設を新設する。
    基本的に城跡に整備するので、警備面で優れており、空港アクセス面も高速に直結できる。アフターコンベンションの意味でも、名古屋城や能楽堂があり最適。

    展示場主体のMICEはセントレアのアレで充分。会議場主体のMICEは、三の丸に作る。現行の国際会議場拡張は無駄なので止める。
    拡張性もないし、立地面でも良くない。ホール機能は残して、会議場機能は縮小させるくらいでちょうどいい。
    金城埠頭の展示場拡張も当然やめる。金ばかりかかる使い勝手の悪い、利用料も当然高い施設を整備するのは悪夢でしかない。

  5. しろた より:

    狙っていたかのようにニュースが出てきましたね。
    ノボール氏のリンク、再整備構想の資料にもあるように、中日新聞の記事にも”一例として県庁舎を迎賓ホテル、市庁舎を博物館として活用する案”があるとしていました。

    旧本町御門の近くにある旧名古屋貯金事務センターの取り壊しが近く始まると載っていますが、その跡地に建設される「名古屋第4地方合同庁舎整備等事業」の実施方針が今月中旬に策定、公表されるようです。

    https://www.kensetsunews.com/archives/523293
    こちらによると、想定規模は
    鉄骨造地下2階地上11階建て
    敷地6581平米
    延べ2万5703平米
    総事業費122億円だそうです。

    • すもも より:

      この再整備事業が、そのまま行われるのなら
      もう再整備構想にある再整備案イラストが
      単なる絵に描いた餅になってしまうんですね
      ちょっとと言うか、かなり残念・・・

      • しろた より:

        そうですよね…。老朽化した建物が新しい庁舎に建て替わるだけでぱっとしない街のままなんてことになったら残念でなりません。
        建設が始まるのは1年程あとになると思いますが、そのまま着工してしまうのか。資料からも事業の速やかな実施が必要だということがわかりますが複雑な心境です。

        名古屋第4地方合同庁舎新規事業採択時評価資料
        https://www.mlit.go.jp/common/001302117.pdf

        同事業の再評価資料
        https://www.cbr.mlit.go.jp/kikaku/jigyou/data/r0207/090_shiryou_3.pdf

        上の絵の様にひとつの大きな庁舎にまとめようとすると、工期を分けて段階的に建設するとしても、一旦仮庁舎に移る必要がありそうですがどうなるのでしょうかね。

        思い切って高層化し大阪のOBPや東京の丸の内の様になったら壮観だろうなと考えてしまいますが今度は高さ規制が障壁になります。
        こちら↓によると三の丸は地上約49mだそう。
        https://www.cbr.mlit.go.jp/kikaku/2019kannai/pdf/re05.pdf

        しかし、本丸御殿や天守の木造復元がなされこれから時代劇の撮影なんかに使われるだろうとすると、やはり景観的な配慮は必要かと思ってしまったり…色々難しいですね。

  6. ジュラ より:

    市役所や県庁の庁舎を宿泊施設に転用するのって容易なのでしょうか?
    建築基準法に則った用途変更・給排水設備の整備が文化財との兼ね合いが厳しそうな気がします。

    個人的に片方は横浜の赤レンガ倉庫的なレトロでお洒落な商業施設を期待します。

    • ノボール より:

      登録有形文化財や重要文化財となっている近代建築をホテルに転用する動きは、京都や奈良で行われている。
      現役庁舎であり、耐震性能も基準を満たしている(免震化済)名古屋市庁舎や愛知県庁舎のホテルを含む他用途転用は、難しくないと考えられる。
      また、文化庁も文化財の活用を重視する流れになっており、近代建築と文化財活用の相性はいい。

  7. なごやん より:

    市役所と県庁は金山駅の上に集約して高層化がベストだと思います。
    アクセスの良い場所にある方が市民県民利益にも合致します。
    金山は機能をとことん集めて力技で発展させていくのが正解だと思います。
    現庁舎は博物館などでいいでしょう。

  8. ノボール より:

    県庁と市役所の立地は、災害対策の観点から三の丸地区での整備が、現在では大前提になっている。

    名駅地区(ささしまライブ)に、という声も以前はあったが、震災リスク(液状化など)と水害リスク(内水氾濫や庄内川決壊)が顕在化すると、そうした声は消えていった。
    市内の他地区(名古屋台地上にあるのは不可欠)に目を向けても、交通アクセス(とくに主要幹線道路や高速道路)と周囲環境(十分なスペースや主要医療機関)の面などを考慮すると、三の丸地区が最適ということになる。

    そうしたこともあり、現在は県市に加えて、国もそうした前提で各種整備を進めてしまっている。

    防災拠点のネットワーク形成に向けた検討
    https://www.cbr.mlit.go.jp/senryaku/3-2-7_bousaika.pdf

    よって、三の丸地区の唯一の弱みといっていい、名駅地区との交通アクセス改善を実現する方が、県庁市役所を移転するよりも、総合的にメリットが大きく、費用も少なくて済む。