4月23日、中日ビルが全面開業しました。旧中日ビルは1966年に完成した栄の大型ビルで、半世紀以上にわたって親しまれてきましたが、老朽化などが原因となって2019年春に閉鎖。その後超高層ビルへと建て替え工事が行われていました。
ビルの構成は低層部商業、中層部オフィス、高層部ホテルという都市型複合超高層ビルの王道パターンです、低層部は旧ビルのデザインが引き継がれ、かつてのビルに入っていた店舗も戻ってくるなど、伝統の継承がテーマとなっています。
オフィスは先年秋ごろから入り始め、ホテルは今年冬から稼働を開始していました。いくつかの店舗は春先から営業を開始しており、4月23日、全店舗が動き出しグランドオープンとなりました。今回はその様子を徹底紹介していきます。
メインエントランスは北西側です。当日はたくさんの人々が列をなしました。ただし夕方以降は並ぶことはなくすんなりと入れたようです。左の列は名古屋初出店のブルーボトルコーヒーの行列で、こちらは列が絶え間なく続いていました。
開業直後のためオープンを知らせる壁紙が大々的に掲示してあります。キャッチコピーは「中日ビルで会おう」です。多くの人々の記憶にある中日ビルが再建し、かつてと同じ場所で再び会う、そして、今まで触れたことのない経験、店舗、楽しさに出会う、そんなメッセージが込められているように思い、とてもいいキャッチコピーだなと思いました。
建物を入ると大きな吹き抜けがお出迎え。地下1階から3階までの4層大空間となっています。階高が高いため古い商業ビルで言えば6層くらいの高さです。
エスカレーターに埋め込まれた間接照明がおしゃれです。全体的に照明の使い方が特徴的だと感じました。
1階のテナントは先ほど紹介したブルーボトルコーヒー以外は、ファッションや雑貨店が中心。とはいってもデパートやミッドランドスクエアのような高級店はありません。誰でも入りやすいような価格帯のテナントが多いです。
私の想像ですが、錦三丁目25番街区は1階をガチガチの高級ブランドで固めてくると予想します。市民が等身大に利用できる中日ビルと、国際都市としての格を上げる栄広場、という対照的な構図になると思います。
左はホテルエントランスへの入り口です。ホテルは三菱系のロイヤルパークホテル・アイコニック名古屋で、2月末から営業開始しています。眺望がすばらしく、栄でも指折りのホテルと言っていいでしょう。
2階の様子です。真ん中の一番いいところにあるのは右のレコードショップです。売り場一等地を最新のコンテンツにあてず、あえてレコードという古い物にするのが面白いです。令和に相応しい装いとしながらも、どこか懐かしい古き良き温かみを感じるのがとてもいいと思います。
上でも書きましたが中日ビルは伝統の継承が一つのテーマなので、いい意味で古さやレトロな感じを思わせる内容になっているのでしょう。逆に栄広場はその真逆で来ると思うので楽しみです。
書籍売り場が充実しています。カフェも併設されていたり、本棚がおしゃれだったりと、今風らしい工夫が見られます。左は入場料がかかる本屋です。街になじむ喫茶店のように、贅沢な憩いの空間を提供します。
このあたりは天井がむき出しです。ダクト、配管類がよく見えます。あえて見せるデザインなのかVEしまくった結果なのかはわかりません。
3階は飲食店ゾーンです。建物北側は洋食の「Bar Español LA BODEGA」や、和食の「うなぎの和光」や中華の「LIANHUA」など多岐にわかります。また北東側には英会話教室や美容室といったサービス系の店舗もあります。
吹き抜けに面してソファが置かれているのは好ポイントです。館内はたくさんの店舗があるので歩き疲れてしまう人もいるかもしれません。そんなときふと座れるソファは重宝します。KITTE名古屋も休憩スペースが多くていいですね。
建物南側はフードコートのような感じになっています。スポーツと飲食を楽しむがコンセプトのこの空間、よく見ると上にモニターがあり中日戦を中継しています。やはり中日ビルなのでドラゴンズの試合は必須です。少し前まで中日は首位でしたが、最近だめですね・・・
こちらは天井は木のルーバー、床は木目調のものを使うなど暖かい雰囲気となっています。こういった空間も最近多いと感じます。
4階5階の南側は中日文化センターです。以前のビルに入っていた施設が戻ってきました。ー般教室、スタジオ、和室、絵画教室など充実した設備があり、常設講座や特別講演会やセミナーなどが開催できます。
4階の他店舗は郵便局やクリニックモールなど、サービス系の店が中心です。大名古屋ビルのフロア構成とよく似ていますね。
5階は全国物産観光センターです。北海道から沖縄まで、全部の県はありませんが、さまざまな地方の施設が集まっています。これも以前の中日ビルにあった施設です。
そして県名を現す柱のサインがおしゃれです。昔の施設機能はそのままに大幅に近代化した格好です。
先ほどの吹き抜けの上のあたりがちょうど全国センター広場と名付けられたスペースになっており、イベントが開催できます。
6階です。かつてエントランスホールにあった壁画「夜空の饗宴」がここに移動しました。昔飾ってあったシンボルが引き継がれるのも大名古屋ビルと同じですね。
ホールが建物北側にあります。以前の劇場と比べるとキャパシティは半分程度ですが、さまざまな催しを開催することができます。南側はカンファレンスです。
右に少し見えていますがここでも照明が特徴的な配置になっています。このランダム配置は非常に印象的です。
7階です。目玉は何といっても屋上庭園。名駅ビル群から栄、テレビ塔の街並みを一望できます。最初期のパースは回転レストラン風のオブジェが設置される計画でしたが、こちらの方がすばらしい開放感があり結果的によかったと思います。回転レストランは円形の芝生として形に残っています。
基本晴れの写真にこだわる当ブログですが、あいにくの天気なものの初日の様子ということでこの写真を載せておきます。
排気ガラリの音が少しうるさいのが気になるポイントでしょうか。豆知識ですがガラリの面風速は給気より排気の方が速いのが一般的です。
地下1階です。栄めし小路と名付けられた飲食エリア外にはさまざまな店舗が集結します。栄の新しいグルメゾーンが誕生です。
なお以前は地下が2層分ありました。新ビルでは商業ゾーンは1層になっているので階高に少しゆとりがあります。
なおこの下は地下駐車場や地域冷暖房設備となっています。
ビル東側の様子です。こちらは完全に裏側です。バックヤードがメインなので窓が少なくミッドランドスクエアの裏みたいな感じです。高層部も窓は少ないです。
通路は南北に通り抜けることができます。南側には駐輪場やホテルの車寄せ、地下駐車場の出入口などがあります。
オフィスエントランスです。モノトーンにまとまっています。その分奥にあるカラフルなアート「Infinity Trinity」が引き立って見えます。三英傑をモチーフとして継承されてきた歴史と記憶、そのなかで進化を続けてきた人間を対比的に描きます。
エレベーターは2バンクとなっています。オフィスは9階~22階だけなので名駅の主要ビルに比べるとコンパクトです。センターコア型の大型ビルはもしかして名古屋初でしょうか。
最後は完成した中日ビルの様子です。旧ビルの意匠を思わせながら街に溶け込むファサードが美しいです。低層部も高層部もうまくマッチしていると思います。
また、これは名古屋人らしい等身大のビルと感じました。1階をハイブランドで固めるのではなく、入りやすい価格帯と店舗とし、物産観光センターや文化センターなど旧ビルの機能をしっかり受け継ぐ。令和の装いとしながらも昔ながらの名古屋のよさを色濃く残すビルと感じました。
そして忘れてはならないのが、栄の超高層化に先鞭をつけたビルとして非常に価値の高い再開発ということです。これまで100m以上のビルがなかった栄に大きな活力をもたらす起爆剤となるのは間違いありません。
最後に、栄の中心に人々に親しまれる新たなランドマークができたことを誇りに思います。開業本当におめでとうございます。末永く愛されることを祈りつつ、記事を終えたいと思います。