あおなみ線の延伸と空港アクセス鉄道を考える

先日、中部国際空港へのアクセス強化策として、あおなみ線の延伸が検討されていることがわかりました。議論がネット上で結構盛り上がっているようなのでこれについて考察記事を書くことにしました。

鉄道の延伸、新設は(このブログに来る)多くの方が興味のある話題だと思います。既に当ブログのコメント欄でも議論していただいている方もいます。たくさんのコメントありがとうございます。

引用朝日新聞記事

まず先日明らかになったあおなみ線の延伸構想についておさらいしておきます。計画では現状あおなみ線は金城ふ頭が終点であるため、これを延伸し中部国際空港へのアクセス鉄道として整備します。延伸先は新舞子で、そこから先は名鉄と線路を共用することになります。事業費はおよそ800億円です。

以前もこの話が浮上したことがありましたが、費用などの問題からそのたびに立ち消えとなり、具体的な進展がありませんでした。このタイミングで延伸構想が再浮上したのは、やはり関西国際空港の台風による損傷があったからでしょう。

アクセス鉄道が2本ある関西国際空港でさえあのような状況になってしまうのですから、それが1本しかない中部国際空港ではなおさらです。2本目の鉄道アクセス検討は妥当です。

というか名鉄しかない現状では、台風以前に、人身事故が起きただけで鉄道アクセスが完全に不通になってしまいます。このような状況はやはり改善すべきでしょう。

しかしこのニュースを最初に聞いた私は、延伸はかなり厳しいのではないかと思いました。鉄道の延伸、新設は大歓迎なのですが、あおなみ線は・・・という感じです。以下にあおなみ線延伸案のデメリットを示します。

①新舞子からは名鉄と線路を共用するため、新舞子~中部国際空港間で事故が発生した場合、名鉄とあおなみ線の両方が機能不全になる。

②金城ふ頭から知多半島側(東海市)に向かう際に名古屋港をまたぐ必要があり、その付近の建設費が莫大になる。

③あおなみ線は名古屋駅~金城ふ頭まで24分もかかり、名古屋駅~中部国際空港までは1時間近くかかることが想定され、速達性に問題がある。

以上が私が思うデメリットです。ひとつひとつ見ていきましょう。

① についてはそのまま書いてある通りです。新舞子~中部国際空港間で人身事故が発生してしまえば、名鉄もあおなみ線も不通となります。空港に2つの鉄道アクセスを用意するのは、片方が止まってももう片方が使えるようにするためなのです。あおなみ線延伸案はこれを満たしていません。それならば線路共用ではなく直接あおなみ線を空港まで伸ばせばよさそうですが、建設費がかさみ、その割には沿線からの乗客もほとんど見込めず、コスパが悪すぎます。

②について。金城ふ頭から東海市方面へ行くには海を越える必要があります。報道では橋梁かトンネルか検討中などとありましたが、トンネル以外ありえません。橋を架けたら船舶が通れなくなるという単純な理由です。また船舶が通れるような橋となると名港トリトンと同等の高さ(50m)が必要になり不可能です。

そしてトンネル方式の問題は、高架の金城ふ頭から一気に地下へ潜らなければならない点です。おそらく現在の高架をそのまま延伸させて地下に潜らせると鉄道が通れない急勾配になるでしょう。よってトンネルを作る場合は野跡と金城ふ頭の間で地下に潜り、金城ふ頭は完全な地下駅として、それを延伸させるしかありません。しかし建設費が莫大になるのは明らかです。

③ について。アクセス鉄道は速達性も重要な条件です。現状あおなみ線は名古屋駅から金城ふ頭まで24分もかかっています。そこから空港へ行くのにさらに30分くらいかかるとすると、全部で1時間くらいかかると予想されます。ノンストップ便は金城ふ頭まで17分ですが、それでも7分しか変わりません。退避設備を設けたりしてもせいぜい名古屋駅~中部国際空港45分でしょう。28分で着くミュースカイを選ばない理由はありません。よってあおなみ線を延伸しても利用客が伸びないと思われ、コストに見合いません。

次にあおなみ線延伸案のメリットですが、ほとんど思いつきません。空港からレゴランドにアクセスしやすくなることでしょうか。しかし鳴り物入りで登場したレゴランドは集客不振にあえいでいます。空港からのアクセスが便利になったところでレゴランドの客はそれほど増えないでしょう。レゴランドが不振なのはコンテンツが薄く、その割に入場料が高すぎるからであって、アクセスが悪いからではありません。その証拠にナガシマスパーランドはアクセス鉄道すらありませんが年中大人気です。

以上のことから、2本目のアクセス鉄道は重要だがあおなみ線の延伸はやや疑問というのが私の意見です。ではどうするのか。私は武豊線の延伸を提案したいと思います。

武豊線は大部駅から武豊駅を結ぶ全長およそ20kmの路線です。ちょうど名鉄常滑線と反対側、知多半島の東側を通っています。かつては非電化でしたが2015年に電化が完了しています。

私の案は半田駅の先から西方面に分岐。主要地方道34号線にほぼ沿ったルートで知多半島を横断する新線を建設し、そのまま中部国際空港に接続します。以下に武豊線延伸案のメリットを示します。

①名鉄とは完全に線路が別のため、片方で事故が発生しても、もう片方は影響なく使用できる。

②大府駅で東海道線と接続するため、現状不便だった三河方面からの空港アクセスが大幅に改善する。

③半田駅付近で連続立体交差事業が行われる予定なので、同時に複線化し線形改良するなど事業を進めやすくなる。

ひとつひとつ見ていきます。①は重要な点です。あおなみ線の延伸では完全なダブルアクセスとなりませんが、こちらの案なら名鉄が不通になってもJR(あるいはその逆)が使えるため、空港へのアクセス性が文字通り強化されます。

②ですが、これも大きなメリットです。武豊線は大府駅から分岐するので、空港特急(仮)を大府駅停車にすれば、岡崎や豊橋方面からのアクセスが大幅に向上します。名鉄利用では神宮前まで行かなければならず、時間や料金がかかります。

③について。私もあまり知らなかったのですが、半田駅付近では連続立体交差事業が行われる予定です。複線化や線形改良などを連携し事業を進めやすくなるかもしれません。

武豊線延伸案のデメリットは単線であることです。空港アクセス鉄道が単線というのはあり得ないので複線化の用地買収と線路敷設が必要になります。立ち退きに時間がかかるとその分遅れるので、そのあたりは不安要素です。

しかし、あおなみ線延伸案に比べればはるかにメリットが多く、空港アクセス強化を検討するならば武豊線延伸案の方が有力ではないでしょうか。

全線複線化すれば空港特急(仮)は名古屋駅~中部国際空港35分くらいは可能だと思います。時間ではミュースカイには敵いませんが、普段JRを利用している客、岡崎や豊橋方面から来る客は十分取り込めるはずです。

事業費ですが、武豊線延伸案は1000億円あれば十分でしょう。あとはJR東海がどのくらい乗り気なのかによります。

ちなみにあおなみ線延伸案は800億円と言われていますが、先に述べた通り地下区間が増えることで費用が莫大となり2000億円くらいかかるのではないかと思います。

先ほどナガシマスパーランドに少し触れましたが、コメント欄でナガシマ方面に延伸という構想も盛り上がっていました。沿線の弥富には名古屋競馬場の移転予定地があるので、そこを「新・名古屋競馬場前駅」にすれば面白そうです。ただ空港方面の延伸同様に名古屋港をまたぐ必要があり、トンネル部分は莫大な建設費が必要です。沿線は住宅地ではないため、ナガシマ以外からの乗客も見込めません。あったら面白いですが、個人的には優先度は低いと思います。

ということで私の持論は、空港アクセス鉄道の強化は武豊線延伸案を第一に考え、それが不可能ならあおなみ線延伸案を実行するというものです。

最後に、これは名古屋の再開発にも言えますが、最も重要なのはスピード感を持って取り組むことです。ただ鉄道の延伸、新設は1年や2年でできるものではありません。今から検討開始するとなるとターゲットはやはり2027年リニア開業の頃となるでしょう。

とにかく検討、検討などと言って全然進まないのでは困ります。中部国際空港の2本目滑走路の話も動き出しています。新滑走路完成時に、あるいはリニア開業時に、名鉄とJRによるダブルアクセスが実現していることを期待します。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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コメント

  1. SA より:

    開港当初から2つ目の鉄道アクセスの必要性は問われていたので、2本目の滑走路に向けた計画&関空の件はいい契機になりましたよね。

    あおなみ線の延伸案は元から莫大な建設費の見積もりで夢の域を越えていなかったですが、武富線の延伸がならなかったのは、開港当時は非電化だったのと、JR東海が色々と県が建設して用意してくれれば…(自前で常滑線を改良して即座に延伸を発表した名鉄はその態度に反発したはず) と消極的だったのを記憶しています。

    今となっては武豊線も電化されてハードルは下がりましたが…、いわばセントレアは東海道新幹線のライバルのため一筋縄でいかないのが残念なところです。
    どんな形であれ、2つ目の鉄道アクセスが実現するとよいのですが。

  2. 名古屋出身の大阪住 より:

    今回の関空の件で、名鉄だけではインフラが脆弱であると判断して行政が動いたのは良いことだと思います。
    ですが、あおなみ線が新舞子に接続するなら、結局名鉄で不具合が起きた場合交通麻痺が生じるのでバックアップとしてはあまり意味を成さないでしょう。
    一方、ここで提案されている武豊線の延伸に関しては、概ね賛成です。
    某掲示板では他にも様々な案が出ており、それぞれ検討する価値があると思います。
    以下にその案のURLを貼ります(URL貼り付けが禁止でしたら、このコメントはさくじょしてください)。
    https://railway.chi-zu.net/38168.html

    しかし、今回の関空のように、既存の橋自体が機能不全になった場合、 あおなみ線だろうがJRだろうが動かなくなります。
    真にバックアップとなり得るアクセスを考えるなら、第2の橋か海底トンネルといった新たな経路を敷設しなければ意味がないでしょう。
    そうなると、結局どの案を採用するにしても膨大な費用がかかり、実現は難しくなる気がします。

    また、あおなみ線延伸では新舞子接続がよく議論されていますが、確か海底トンネルを空港まで通す案も検討されることになっていたと思います。
    これは桁違いに費用がかかるため実現する可能性はほぼないと思いますが、インフラの確保の面で考えるとこの案も一考に値するのかなと思います。
    この場合、ポートアイランドへの接続を前提として、ポートアイランドの開発も同時に進めるべきだと思います。

    いずれにせよ莫大な時間と費用がかかるため、何処に着地するにせよ一筋縄ではいかないと思いますが、愛知県と名古屋市、鉄道各社が連携し、空港への新線が実現することを願います。

  3. なななし より:

    武豊線の最大のデメリットは単線であることで時間当たり2本しか走っていないので複線化しないと延伸は現実的じゃない
    田畑なら買収も容易だけど数軒ならまだしもいくつもの住宅地の住人全てに立ち退きしてもらうのは無理
    1軒でも残れば頓挫ですね
    仮に単線のまま延伸したら…
    今現在、名古屋から半田までほぼ1時間かかるので常滑までとなると…

  4. 名古屋っ子 より:

    新舞子駅を経由するルートは名鉄常滑線の列車本数増加による線路容量不足を解消でき、採算性の面でもコストパフォーマンスに優れていますが、災害時の輸送ルート二重化という本件の主旨に整合性がないですね。
    前に、名鉄の会長が事前に名古屋市からの問い合わせもないと不快感を示されていましたが、コメント内容から推測すると空港アクセスの強化面でのコメントかと思われます。未使用のホームがあると言ってますので。

    但し、利害が絡んでくるとよっぽど慎重に交渉しないとこじれますね。
    それにして、名古屋行政は検討段階と言えども水面下交渉術が下手ですよね。主さんも言われてますが、いつものように検討ばかりに時間をとり、機を逃さないように願いたいものです。

  5. 匿名 より:

    非常時に対応出来るよう中部国際空港への鉄道アクセスルートをもう一本確保するという考え方自体は否定されるべきものではないと思いますが、技術上あるいは新しいアクセスを運営する鉄道事業者の採算上これの実現はあり得ないと考えます。現在の中部国際空港駅の1日平均乗降者数は2万5千人弱で、新鉄道アクセスルートが完成してもこの数値に大きな変動は無いと思います。仮にJR東海が莫大な費用をかけ設備投資を行って新アクセスルートを開業しても、この2万5千人程度の利用者を名鉄と分け合ってどれだけの利益を上げられるのかは、計算するまでもなく明らかで、設備投資と運営費に見合う利益は絶対にあげられないでしょう。JR東海は新ルートの建設に何の関心もないものと思います。ここは非常時に備えて、実現性の全くない鉄道アクセスルートの2重系化を考えるより、非常時の発生そのものを極力少なくすることを考えた方がいいと思います。その一つが常滑線の地平走行区間の連続立体交差化事業による踏切除去により踏切障害を減少させることです。これでも人身障害による鉄道アクセス機能の支障は残りますが、より長時間アクセス機能を支障する可能性の高い踏切障害が少なくなるだけでも効果は大きいと思います。関西国際空港は台風21号の高潮で、かなりの時間機能停止に陥ったようですが、台風24号で同じ高潮に遭遇したはずの中部国際空港は全く以上なく機能していたようです。これも中部国際空港が関西国際空港の失敗を十分に学習して建設されたという経緯があるためようです。ここで何が言いたいのかと申しますと、要はそもそも非常事態が発生しなければ何も問題は無いと言うことです。中部国際空港へのもう一本の鉄道アクセスルートを考えるというわくわくするような話題に水を差すようなコメントで申し訳ありませんが、ここは少し冷静になって考える必要があると思います。

  6. 匿名 より:

    「はじめは大きな物は建てるつもりはないが、(再開発計画は)できるだけ早い時期にまとめたい」――。丸栄の親会社、興和の三輪芳弘社長はこう述べる。再開発計画については、まず10~20年利用する施設をつくり、その後に設ける施設は「まだアイデア段階だが、色々な食べ物の店舗やエンターテインメントなど行って楽しめる場所にしたい」と説明した。
    興和は当初、リニア中央新幹線が開業する27年には、2段階目の再開発を終える考えだった。北側の地権者である安藤証券との調整が難航していることに加え、新たな商業施設像が固まらないことも計画を後ずれさせた背景だ。三輪社長も「具体案はこれから」と述べるにとどまる。

    20年前半までの予定だった暫定施設が10~20年使われるみたいですね。丸栄もう厳しそうです。

    • 匿名 より:

      興和は資産運用をしていると思います。
      地権者との調整難航と言ってますが、丸栄の一部テナントの立ち退き提訴問題もあります。

      本気で再開発をやる気があるのなら、10~20年の期限付き暫定施設など建設する必要はないと思います。国際ホテル跡地と一体開発が表向きですが、現況と交渉難航と言い出してもう何年も経過しています。これに、キャッスルホテル及びプラザの建替えも控えています。

      興和自身に並行して行なう資本力が到底あるようには思えません。
      売りに出して、売却益でホテル建替えを行ない、跡地は三井や三菱地所等のデペが再開発したほうが、よっぽど良いと思います。

      暫定施設と言い出して時点で怪しく思いましたが、当たってしまいました。残念です。

    • たぬ より:

      高級ホテルにしてもそうですが一度に複数の開発を手掛け 丸栄のテナント問題で難航中と安藤証券云々と言っていますがそれ以外にも問題はあったと思います。
      自社でやりたいのは分かりますが大人しく大手に頼っても良かったかなあと

  7. 天白区の人 より:

    名古屋市はどうしても「あおなみ線を延伸させて、名鉄と相互乗り入れという手段を使ってでも空港アクセス路線にしたい」と思います。

    武豊線ルートでは一切名古屋市は関係してこないですからね。

    愛知県と常滑市や武豊線沿線市町村、JR東海のみで武豊線延伸化をしたほうが話がスムーズに行くと思います。

    ただ近鉄が近鉄弥富から長島スパーランド→中部空港とルートを伸ばしてくる可能性も0ではありません。
    名鉄よりも規模が大きい会社ですからね。何をやるかわかりません。

  8. 匿名 より:

    ポートアイランド開発の話があってのあおなみ線延伸なんだと思います。
    金城の機能をポートアイランドに移すことになると現場で働いてる方々の間ではすでに噂になっています。
    その後、金城の再開発でテーマパーク化?
    https://www.decn.co.jp/?p=91185