再開発で大変貌 激変する広島駅前

今回は広島編の最後を飾る駅前再開発特集です。10連休に訪れた広島は5月下旬の観光編、前回の建築編でもお伝えしていますので暇な方はそちらもご覧下さい。

広島はこれまで再開発や街並みの整備という点ではやや後れを取ってきました。特に駅前の再開発は地権者の合意が難航したり景気の冷え込みによって幾度となく延期がされていました。しかし近年はその遅れを取り戻すかのように再開発の動きがかなり活発になっています。

まずは広島駅の北東側の「二葉の里」とよばれるエリアです。ここは広島駅に隣接する13haの広大な国有地で、開発ポテンシャルの高い「広島最後の一等地」と呼ばれていました。

先行してオープンしたのが広島テレビとグラノード広島です。グラノードは大和ハウス主導で開発された複合ビルで、低層部は広島市内最大級のオフィス、高層部はホテルが入居しています。

テレビ局とオフィス、ホテル複合ビルという組み合わせはささしまライブを彷彿とさせます。大学が進出すればさらににぎやかになりそうです。

二葉の里を貫く広島高速道路5号線です。広島東部における定時性の向上や空港と都心部のアクセス改善が期待されています。

再開発エリアの北東側はすぐ山が迫っており、5号線はトンネルとなります。完成すればトンネルを抜けた瞬間いきなり近代的なビル群が広がるという光景が楽しめそうですね。

二葉の里の真打はJR西日本支社ビルの再開発です。業務機能を移転するためのビルは近隣で既に建設中であり、移転後にはこのビルが建て替えられることになります。

広島駅の目と鼻の先、ペデストリアンデッキ直結、そして敷地の広さも十分。再開発にはこれ以上ないほどの好条件が揃います。まだ詳細は明らかになっていませんが、かなり期待できそうです。

次は駅の自由通路を通って南西側の再開発を見て行きましょう。

この自由通路も大幅リニューアルされたものです。天井は広島らしい折り鶴をモチーフとして、白基調の明るい空間となっています。

そして何と言っても圧巻の人の多さ。元気な広島を肌で感じました。

南西側にはBブロック再開発と呼ばれる広島一の超高層、シティタワー広島(52階・197.5m)がそびえます。その名の通り住友不動産のタワマンで、住不らしく凹凸の少ないオフィスのようなデザインです。200m近い高さは圧倒的ランドマークです。

低層部にはビックカメラが入居していて、施設全体の名称はビッグフロント広島と呼ばれています。

南側にはCブロック再開発、グランクロスタワー広島(46階・167.9m)が建っています。さすがにシティタワーよりは低く感じますが、それでも名古屋のどのタワマンよりも高いです。

低層部には蔦谷家電が入居しています。非常に洗練されたお洒落な空間でした。Bブロックも低層部は家電量販店ですが、求めるものの違いでうまく棲み分けできているのかもしれません。

このツインタワーの出現は、これまで再開発の遅れていた広島駅周辺のイメージを一新させるインパクトがありました。今や駅周辺は再開発が遅れているエリアではなく、広島の最先端のエリアに変わりつつあるのです。

広島東郵便局は駅の北西側にある老朽化した郵便局です。この東郵便局もつい先日、建て替えが発表されました。

引用日本郵便プレスリリース

計画自体はありましたが、今回初めてパースが明らかになりました。規模は20階、延べ4.4万とオフィスビルとしては広島最大級。低層部には商業施設が入ります。

郵便局は鉄道輸送の名残で各都市の一等地を押さえています。それを生かしたオフィス開発が東京、名古屋、福岡では完了していて、次なる再開発がどこになるか注目されていました。今回広島が選ばれたのはその勢いを象徴する出来事と言えます。

そして駅周辺の再開発の大トリを飾るのが広島駅の建て替えです。

現在のビルは築後半世紀以上が経過し、建て替えが急務となっていました。また手前に見える路面電車は定時性に大きく問題があり、その改善も課題となっていました。

これらの問題を解決するため市や広島電鉄、JR西日本は協議を重ねており、その行方が注目されていました。そして今年3月、ついに駅ビル建て替えの全貌が明らかになりました。

引用JR西日本プレスリリース

こちらがそのパースです!近未来的でカッコいい!

JRは駅ビルを保有しているため、その敷地は一等地どころか駅直結であり、先に述べた郵便局以上に収益化が行われています。その結果が名古屋駅に代表されるさまざまな機能を詰め込んだ巨大駅ビルです。

JR西日本の管区では京都駅、大阪駅が巨大ビルに生まれ変わりました。そして次なる都市として選ばれたのが広島。三宮より先にパース発表となったのはやはり広島の勢いやポテンシャルの高さの表れでしょう。

延床面積は11万平米にも及び、商業、ホテル、シネコンなど多種多様な機能が入ります。先に挙げた駅や博多駅などと比べれば面積は少ないですが、都市の規模を考えれば十分素晴らしい内容です。

そして注目すべきは広島電鉄。現在は地上にある電停が駅の内部に入り込み、JRからのシームレスな乗り換えが実現します。またいくつかの信号を高架でパスできるため定時性の向上も見込まれます。

こちらがその内部です。すごすぎます。大阪駅(ノースゲートビル)などを見れば分かりますが、JR西日本はこういった大空間が好きです。この空間は単なる駅を超えて、路面電車の発着そのものを楽しめるエンタテインメント空間になっています。

郵便局は2022年、駅ビルは2025年の完成予定です。あと数年すれば広島駅はとんでもなく変貌していることでしょう。

最後に観光編でも載せた広島城からの景色をごらんいただきましょう。発展著しい広島駅は左端付近です。そこから右に向かっていくと八丁堀、紙屋町が見えてきます。右奥で建設中なのは「hitoto広島ザ・タワー」で、53階・178.08mの規模を誇ります。写真には入っていませんが、この他にも紙屋町では広銀本店の建て替えやサンモールの再開発などが、西広島駅付近ではアストラムラインの延伸やタワマン整備などが予定されており、市内各地で再開発が目白押しです。

いかがでしょうか。広島は長年の沈黙を破って、堰を切ったかのように再開発が進み、遅れを取り戻すどころか一気に都市開発の先頭に立とうとしているのです。勢いのある大阪と福岡に挟まれているためやや埋もれがちですが、広島はこの2都市と比べても決して引けを取らないレベルだと思います。

さらに広島は原爆ドーム、宮島という超強力なコンテンツを揃えています。数年後には広島駅もさらなる変貌を遂げます。インバウンドも相まって街全体の勢いはかなりのものです。広島の進化はどこまで行くのでしょうか、今後に期待です。

6/11追記:普段名古屋が叩かれているから反撃として広島を叩くというコメントに関連して、反論や擁護などで大荒れになりました。それに関連するコメント16件はすべて削除しました。

そもそも普段名古屋が叩かれているのが不満ならそのコメントに対して理屈で反論すべきであって、広島の記事でわざわざ攻撃的なコメントをする神経が理解できません。そういうコメントはかえって名古屋の印象を悪くし、広島の人にも申し訳ないです。

ただしだからといって、名古屋を過剰に悪く言ったり自虐しまくるのも困ります。一部の人にそういう傾向があり、その意見が割と強いのでそれがこのブログの総意のように見えるかもしれませんが、少なくとも管理人は根拠のない名古屋下げは本当にやめてほしいと思っています。地元だから悪い点に目が行きやすくなるのはわかりますが、批判すべきところは批判して、評価すべきところは評価して、もっと建設的なコメントをしてほしいです。

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コメント

  1. @ より:

    広島市民として率直な感想です。
    広島駅周辺は名目上都心部になっていますが、実態は郊外の地域です。
    あのあたりを歩けば、紙屋町や八丁堀、袋町などと違い、業務地域が少なく古くからある(少し寂れた)民家がとてもたくさんあることがわかります。
    とてもじゃないですが、そんな郊外の地域にビジネス主体のビルは建てられません。
    開発してもある程度効率よく投資を回収できるものとしてタワマンがたったのは当然の判断なのではと感じます。
    ホテルは外資が入らなかったのは少し残念ですが、既に新幹線口側にシェラトン、数年後には平和大通り近く(富士見町)にヒルトンが進出することから、ハイグレードな外資系ホテルはなかなか入りづらい状況にあると思います。
    とはいえ、JR西日本広島支社ビルの再開発の詳細はまだプレスが出てないので、そこで外資系ホテルが入る可能性も否定できないので、これからの発表に期待しています。
    地下鉄はたしかに広島駅にはありませんが、お隣の新白島駅に行けばアストラムラインに乗り換えができます。これが実質的に地下鉄の役割を果たしていて、市の中心部、紙屋町まで行けます。
    路面電車は地下鉄と違って、階段を上り下りする必要がないですし、運賃も安い、本数も八丁堀、紙屋町に行くなら時刻表見なくても困らないくらい本数多いですから不便はないです。
    新しい広島駅ビルができれば今の遠回りで紙屋町・八丁堀に向かっていた路線が近道のルートに変更になるので、ますます地下鉄を作る理由はなくなります。
    日本郵便のビルは広島の再開発ブログでも評価は高いですが、KITTEにならないのかの不安が飛び交っています。イメージを見る限りでは駅と直結していないようにも見えますし、案外と賛否はわかれていますよ。

    • たぬ より:

      自分を広島を二度ほど訪れたことがあるのですが個人的には広島駅は博多駅のように核となる商業施設を建てて天神に次ぐ繁華街として確立したように広島も八丁掘(紙屋町〜銀山町周辺)に次ぐ繁華街になるポテンシャルはあると感じました
      名駅が再開発によりトヨタのオフィス機能を移しバローやユニーを始めとした市外に本社を置く企業が次々と市内に移したように広島もダイソーとか福山通運とかマツダとか正直札幌や福岡より地元資本が強いと思うのですがこの際に大規模なオフィスビルを立てて誘致…なんてのは流石に無理でしたかね(汗

      • @ より:

        これは広島に住んでみないとわからないことだと思いますが、広島は都心部の商業地域よりも郊外の大型SCに買い物に行く人が多いです。
        その理由として、自動車を保有する人が多いこと(平地に住める場所が限られるから斜面に団地が大量にあるため)や、地場の小売業大手イズミとその牙城を崩さんとするイオンや愛媛のフジがSCを郊外に大量に出店した(専門家からオーバーストアと指摘されるほど)ためわざわざ都心部に行かなくても買い物が十分にできます。
        広島駅も実態は郊外のような地域なので、お隣の天神川駅から徒歩3分ほどのところに中四国最大規模のイオンモールがありますので、駅に大規模な商業地域は既に作りづらい状態にあります。
        また、広島駅は南口すぐに川、北口(新幹線口)すぐに双葉山が存在するなど、大規模な商業地域やビジネス街を建てるには地理的に難しいといった問題もあります。
        昨今の旺盛なインバウンドの効果と、JR西日本管内では大阪駅につぐほどの売上高を叩き出している広島駅だからこそ、なんとかあれほどの規模の駅ビルの再開発ができましたが、それが周辺地域にまで続くかはなかなか怪しいと思います。
        何より札幌駅、東京駅、名古屋駅、大阪駅、博多駅が発展できた理由のひとつとして考えられることは、どの駅もそれぞれのJRの本社がある中心駅だからです。だからこそ投資を積極的にするのは当然の流れで、逆に仙台駅や広島駅など地方では大きな駅でも本社でなく支社があるところは車両や設備が一段階遅れてされたと考えられます。
        またむやみに広島駅周辺が発展してしまえば、ますます都心の空洞化が進むので、ほどほどの発展で十分ではないかと感じます。

        • ノボール より:

          さすが地元の方ですね。すごい勉強になります。

          グーグルマップなどで名古屋を見て、同じ縮尺で広島を見ると、平地(太田川のデルタ地帯)が限定されていることが一目瞭然です。
          その代わり、南以外三方を囲む山々に、ニュータウンが造成されていることもすぐにわかります。これでは車が必須です。

          今後は、現在でも新造されるこうしたニュータウンがどうなっていくかが肝になっていきますね。
          所謂、郊外型MaaSを早期に普及させて高齢化などに対応できるのか、それとも他都市のように鉄道駅周辺への集中とニュータウンの衰退となるのか。
          鉄道駅への集中は大なり小なり進むでしょうから、今後も高層マンションの建築は進むのではないでしょうか。
          また、それらの住民を相手にした商業施設も、やはり駅近に整備されていき、広島駅もさらなる発展を遂げると思います。

          広島の都心域についても、広電ネットワークによって、同様の効果が見込めると思われ、都心域への高層マンション建設もさらに進むと思います。
          改めてになりますが、これらと並行して郊外をどうしていくのかが、広島の将来の大きな課題であり、可能性でもあると思います。

          • @ より:

            個人的には広島の郊外ニュータウンは他県の例に漏れず衰退が進んでいき、土地の少ない平野部に人口が集約されていくと考えます。

            理由として、既に一部のニュータウンではニュータウン内のスーパーが突然潰れる事象が発生しており、高齢化が年々深刻化しつつあります。
            また、ここ数年で発生した西日本豪雨や八木地域の水害は山の斜面に団地を形成することの危険性が改めて証明されたことになり、進んで住もうという人は減っていると感じます。

            ノボールさんのおっしゃるように、平野部の駅を中心に人が集中すると考えます。
            商業地域もそれにより発達すれば良いのですが、現状のSCのオーバーストアは看過できる状態ではありません。このままいけばSC同士の共倒れの危険もあり、一番それで迷惑を被るのはその地域に住む市民です。

            この問題をどう処理するか、大店法など諸法律のことも今一度見つめ直しながら対処することは、広島市の未来を決めることでしょうし、他の都市でも議論を進めていく必要があると思います。

  2. より:

    路面電車ほど便利な交通手段は無いで

  3. 梅星 より:

    広島駅のパースは見ていてわくわくしますね。路面電車の発着をエンターテイメントそのものに見せる、というのは現在富山駅でも進めていましたが、非常に魅力的でした。
    路面電車は回遊性も高いですし、都心の景色を見ながら移動できるので、個人的にはうらやましいですね。
    名古屋のLRTやBRTの計画はどのようになるのでしょうかね。

    • 素人 より:

      名古屋駅のSRT乗り場はどこに設置するんでしょうね。
      やっぱり東口に新しく出来る広場から乗れるのが理想ですかね、ただ目の前が交差点だし場所を確保するのが難しいかな。
      広島の路面電車並みに便利になってくれたら良いですが。

      • ノボール より:

        ですね。
        現状の機能配置図を見る限り、タクシーなり自家用車なりの動線と交差してしまうので、枇杷島デルタ状態となり危険です。しかも、定時運行の面でもデメリットしかない。

        最大の問題点は、名古屋市自身がSRTという交通システムを、どのレベルの交通システムとして想定しているかが極めて不透明なことです。
        広島にはたしかに地下鉄はありませんが、広電のネットワークが主要交通システムとしての確固たる地位を築いており、自然とこれを基軸に交通政策が策定されます。
        一方の名古屋市の場合、地下鉄が基軸となり、市バスネットワークがそれを補完する形になるわけですが、ここにSRTをどう絡めるかを決めかねているように見えます。
        現状では、758系統を置き換えて、かつ少し未来感を出し、ちょっとだけ1便当たりの輸送力を増やそうかな?という極めて投資コストの低い交通システムになりかねません。
        このような交通システムに、駅前一等地を明け渡すのも馬鹿らしいので、それならバスターミナルにでも発着すればいいんじゃない?となります。

        定時運行性と輸送力を大幅に増強し、栄や大須地区との回遊性を高めるシステムに昇華させるならば、駅前のみ高架にして自動車との動線を分離し、名駅を東西に貫く2階デッキとシームレスに接続させる、なんてアイデアも有効そうだとおもいますが。

        広電の、
        ほいなら広電を駅につっこんじゃるけぇのぉ
        という潔さに比べると、SRTというのはどうにも霞んでしまいますね。

        そもそも論として、そこまでして栄や伏見、大須に人を誘引できるのか?という部分は魅力作りをして両輪でやるしかありません。

  4. トム・ソーヤ より:

    新幹線で広島をよく通りますが、駅周辺やマツダスタジアムと街並みが大都市の風格を醸し出して威風堂々としていますね。

  5. T より:

    友人が広島にいて、去年だったかマツダスタジアムで観戦中!って外野からの写真が送られてきた時に、タワーマンションなどバックの街並みが凄く都会的で素直にびっくりしましたね。
    記事の写真を含めて景観の変わりように驚きですが、広島にはかれこれ7~8年以上は行っていないので、広島駅を含めて浦島太郎状態です(笑)
    誉め言葉で広島の街もだいぶ変わって都会的だね~!って伝えたら謙遜していましたが、やはり景観的にも高層ビルやタワーマンションの高さって重要なんだなと認識した次第。
    もちろん、ビルや建物の高さで都会度をはかるなんて田舎の考えその物なのでそこはお恥ずかしい限りですが、分かりやすい指標ではありますね。