先日、札幌へ行ってきました。当ブログでは4年弱ぶりの記事になります。再開発を中心にいろいろ見てきましたのレポートします。なお次回は旅行編です。
北の大都会札幌は再開発ラッシュとなっています。駅ビル、ヨドバシ、大通の再開発が特に大きく、私はこれを当面の札幌を引っ張っていくであろう3大再開発と呼んでいます。他にもいくつか大きな計画があり、建設中のビルと外国人観光客が多い札幌の街は活気がありました。
札幌市はこの開発のムーブメントを「大札新」と名付け、建て替えによる市街地整備、企業誘致、都市格向上などを見込んでいます。「天神ビッグバン」もそうですが、何かスローガンをつけてやるのはいいと思います。
早速紹介していきましょう。まずは札幌駅の南東から見た様子です。JR北海道が推し進める札幌の新駅ビル計画、これが札幌最大のプロジェクトです。左に見える商業施設エスタは既に閉館し、跡地に低層の商業施設を建設します。そして右に見える空き地にメインとなるタワー棟を建設する壮大な計画です。
最初の計画では高さ255m、延床41.7万というとんでもない規模の予定でした。その後若干見直しが入り、今のところ高さ245m、延床38.7万となっています。東名阪以外では唯一無二の規模と言っていいでしょう。
しかし建設費の高騰という要因から、さらなる縮小も検討されています。労働力などの関係から開発時期もエスタ跡地とその東側のタワー棟を同時ではなくずらす計画に。エスタは当初通りでタワー棟は4年ほど遅らせる計画となります。
敷地です。かなり広く札幌最大の一等地と言ってもいいでしょう。駅ビルは長きにわたって玄関となり続ける場所です。シンボリックで立派なビルになってほしいですね。
とはいえJR北海道には逆風が吹きます。厳しい経営環境から赤字は改善せず、頼みの綱だった新幹線の開業も2038年に延期される見込みです。建築費も当面厳しい状態が続くことから、多くの報道機関が縮小が濃厚であると報じています。
現実的なラインとしては200mくらいでしょうか。それでもインパクトは大きいと思います。これがJRタワーと同じくらいだと一気にインパクトが下がるので、やはりできるだけ縮小幅を抑えて頑張ってほしいところです。
こちらが43階・245mのときのパースです。エスタ跡地と一体で、しかも道路をまたいで建っていることがわかります。規模縮小や段階開業に変更したことで、見た目はここから大幅に変わることが予想されます。
また、上層階にはマリオット系高級ホテル進出の話も出ていました。計画縮小や延期となるのはそうした面からも痛手です。なんとか計画が進んでほしいですね。
次は駅南口を降りてすぐ、ヨドバシカメラの再開発です。低層部にヨドバシ、高層部にオフィスが入る複合高層ビルが建設されます。もともと西武百貨店(旧五番館)などがあったところです。
ヨドバシは梅田で巨大施設を完成させたように、自社による駅前大型ビル開発を加速させています。先日は名古屋でもサンシャイン栄を取得したニュースが流れました。ただし札幌ほど敷地をまとめるのは現段階では難しいと思われ、今後の動向が気になるところです。
こちらは北東から見た様子。ビルに谷間がとてもかっこよかったので思わず撮影した一枚です。左からこちらも工事中のヒューリックのビル、その奥に札幌三井JPビルディング、右にはこれまたできたばかり、D-LIFEPLACE札幌と重厚な日本生命ビル、そしてその谷間に建設中のハイアットセントリックが見えます。
重なりがとてもかっこいいです。再開発をあまり知らない人であればこの写真が東京と言われても違和感はないでしょう。それくらい札幌のビル集積度は高いのです。
なお手前がヨドバシの敷地のため完成すればすべて見えなくなります。期間限定の景色です。
建築計画の看板です。札幌は工事監理者の欄があるのが特徴的ですね。都市ごとに記載内容が若干異なります。
高さは158.57mです。実はこちらも当初は200m級で検討されていました。縮小してしまったのが悔やまれる点です。
パースです。低層部は最近できた梅田や仙台のヨドバシと同じような感じです。ただし高層部はデザインも用途も梅田とは異なります。
当初の200mの計画ではこの上にホテルが入るはずでした。断念の理由は資材価格や人件費の高騰です。やはり昨今の建築費の上昇が与える影響は深刻です。
3大再開発の最後は大通です。こちらは平和不動産などが進める複合ビル計画で、現在は既設ビルの解体が進んでいます。完成は2028年の予定です。
ビルの規模は36階・185mです。少し前、長らく道内一の高さであったJRタワーは、その称号をONE札幌ステーションタワーに移しましたが、こちらが完成すればさらにその座が移ることになります。こちらは規模縮小が一切なく計画が進んでおり、JRの新駅ビルも不透明な現状、このビルがしばらく道内一の高さのホルダーとなるでしょう。仙台トラストタワーも超えるため、北関東以北のトップでもあります。
なお延床は99800平米です。札幌は10万平米がアセスメントの基準になっているようで、それをぎりぎり回避したプランとなっています。
完成予想図です。丸みを帯びた外観が特徴的、上層部は最高級ホテルのパークハイアットが進出します。
低層部にはテラスもできるようで、大通の向こうに札幌テレビ塔を臨むことができます。低層部の商業、中層部のオフィス、高層部のホテルといい、ロケーションと言いまるで中日ビルや栄広場のようですね。やはり札幌はなんだか似ていて親近感があります。
なお平和不動産は先ほどのヨドバシ再開発にも関係しており、札幌への投資が積極的です。
さて札幌ではその他にもいくつか再開発が進んでいますが、その中でも特筆すべきなのが写真のハイアットセントリックのビルです。実はこちら、請け負った大成建設が施工ミスを行い、それを開発事業者であり監理者でもあるNTT都市開発が発見、結果的に工事をやり直すことになったビルです。
既に15階くらいまで組んであった鉄骨はすべて解体、その後再び建方を行うという内容が衝撃的で、全国ニュースにもなったため覚えている方もいると思います。工事期間も2年半延長になりました。完成本来2024年だったのが、現状2026年の予定です。
ヨドバシの看板にもありましたが監理とは工事がちゃんとできているか設計図書や施工基準を見ながらチェックすることです。現場でよく聞く施工管理(工程やコストなどの管理を行う)とは別で「さらかん」と呼ばれます。これがしっかりしていないと建築の品質を担保できないのでとても重要な仕事です。
さてここからは札幌テレビ塔からの景色を見ていきましょう。
行ったときはちょうど桜が満開でした。高さは147.2mなので180mのテレビ塔の弟みたいな感じですね。ただし展望台は90mにありこれは名古屋と同じです。設計は塔博士とも呼ばれる内藤多仲です。
入場料は1000円とちょっとお高め。まあ名古屋も900円なので全国的に展望台は高価格がトレンドなのでしょうね。
まずは北側。高層ビルが最も多い札幌駅方面です。やや左に見えるのは札幌創成スクエア。劇場や文化施設、オフィスが入る複合ビルです。JRタワーはちょうどそこに隠れてしまっています。新駅ビルができれば創成スクエアの右に、ヨドバシは創成スクエアの左に、それぞれ見えてくるはずです。
右にいくつかタワーマンションが見えています。札幌のタワマンは住友不動産、東急不動産、大和ハウスあたりが多いイメージです。名古屋は積水や野村が強いので、やはりその都市によってプレイヤーが違ってくるのも面白いです。
西側です。大通が続いています。本当に名古屋とよくいていると思います。ただし山が迫って見える点は大きく違います。5月なのに雪が見えていてさすが北海道だなと思いました。
紹介した平和不動産の再開発は3つ目のブロックの左側です。さらに一番左手前のブロックでは札幌を代表する百貨店である丸井今井の再開発構想もあります。ホテルなども含めた複合ビルにするという計画もあるようで、今後も目が離せません。
南側です。高層ビルは少なく100mほどのタワマンがいくつかあります。右のエリアがアジア最北の大歓楽街であるすすきの。映画館も入る複合ビルのココノススキノや水族館も入るモユクサッポロなど新施設も続々オープンしています。
左奥に反射して見えるのは札幌ドームです。日本ハムが北広島のエスコンに行ってしまったので稼働率を上げるためコンサートなどの誘致を行っているようです。その北広島では最近130m級タワマンの計画が持ち上がるなど、開発ラッシュでひとつの街ができつつあります。千歳線で空港から来ると途中通過時その存在感に圧倒されます。
最後は東側です。名古屋と違い札幌はテレビ塔が大通公園の端に建っているので、公園がない側は普通の市街地になっています。名古屋の感覚でいるとちょっと違和感がありますね。
こちらも左側のシティタワー札幌大通を除けば高層ビルは少なめ。また駐車場として低度利用されている土地もちらほら見受けられます。水面下ではいくつか計画もあるようで、今後明るみになってくるかもしれません。
いかがでしょうか。札幌は「大札新」に向けた開発を続々と進めています。今後は新幹線の開通延期や資材高騰という厳しい条件の中、どこまで計画を予定通り進められるかがカギとなりそうです。北の大都会が「大札新」して変わっていく姿に注目ですね。
次回は旅行編です。広い北海道はまだまだ行っていないところばかり。今回は北を目指します。