中日ビルは、久屋大通を挟んで三越の反対側にある、栄のシンボルといえる超高層ビルです。その名の通り、中日ドラゴンズの親会社である中日新聞社が保有する旧中部日本ビルディングの建て替えにより完成しました。
1965年に完成した旧中部日本ビルディングは半世紀以上にわたって名古屋市民に親しまれましたが、老朽化のため2019年に閉館。その後工事が行われ2024年に2代目となる現在の超高層ビルが開業しました。
住所 | 中区栄4丁目1-1 |
高さ | 158.887m |
階数 | 33階 |
敷地面積 | 6,852.35 m² |
建築面積 | 5,952.71 m² |
延床面積 | 117,267.00 m² |
竣工 | 2023年 |
建築主 | 中日新聞社 |
設計 | 竹中工務店 |
施工 | 竹中工務店 |
中日ビルの外観です。建物は3段構成です。まず低層部は商業施設やホール、中層部はオフィス、細くなっている高層部はホテルです。低層部は旧ビルと同じような形状ですね。
色合いは旧ビルを踏襲して全体的に黒基調です。そこに白い外装材が碁盤の目のように取り付けられ、これまでの名古屋の超高層ビルになかったデザインとなっています。
開業時の「中日ビルで、会おう」というキャッチコピーは秀逸だったと思います。かつて名古屋の人々のさまざまな思い出を作り愛されたビルが再びこの地に戻って開業する感動が短い言葉に込められているようで好きです。
高さ158.877mは栄で初めての本格的超高層ビルとして大きな存在感があります。これまでの栄のビルは100m程度のものしかなかったため、革新的と言えます。
さらに、中日ビルの登場後、三越や栄広場など同等またはそれ以上の超高層ビル計画が持ち上がりました。三越は頓挫中ですが、中日ビルが先駆者として栄の超高層時代を切り開いた功績はとても大きいと言えます。
低層部です。3階までは商業施設、4階5階は文化センターなどの公益施設、6階はホール&カンファレンス、7階は屋上庭園です。
外観ファサードは旧ビルの特徴を踏襲した上質でシックなデザインです。夜になると歩道には商業施設からの光が漏れ出し、都会の華やかな賑わいを創出します。
東側から見た様子です。こちらは裏に当たるため低層部の窓は少ないです。またホテルの高層部はセットバックしているためあまり見えません
オフィスはセンターコアのため東側も眺望があります。トイレやエレベーターなどは中央部分に集約されています。名古屋の超高層ビルでセンターコアは唯一かと思われます。
南側です。建物の敷地に段差があるのでその部分はテラスとして利用されています。緑あふれる空間となっています。
右奥、建物南東にはホテルの車寄せとエントランスがあります。ホテルは三菱地所系のロイヤルパークホテルズ。高層階からの景色は見事です。
それでは建物の中を紹介していきましょう。
地下1階から3階までをつなぐ吹き抜けです。来場客を受け入れるシンボリックな空間として非常に開放感があります。
最新の商業ビルということで階高が大きいです。旧ビルだったらこれで6階分くらいあるでしょう。
やや高価格帯の店舗と大衆向けの飲み屋的な店舗が共存しています。3階のこの一角は居酒屋のような雰囲気です。
ビール片手に中日ドラゴンズの試合が楽しめるコーナーがあるのは中日新聞社の運営ならではでしょう。あまり気張らず普段使いの延長のような形でビルを楽しめる等身大感が中日ビルの特徴かと思います。
6階はホール&カンファレンス。かつての中日劇場ほど規模はありませんがMICEに必要十分な機能が集約されています。
中央に見えているのは夜空の饗宴です。かつてのエントランスの天井にあった壁画が新ビルでも場所を変えて残されることになりました。歴史を感じさせる試みはとてもいいですね。
天井のランダムな照明が印象的です。これは夜空の饗宴をモチーフにつくられたもののようです。
屋上庭園です。ウッドデッキと芝生広場から名古屋の街を一望することができます。夜にも入ることができ、ロマンチックな夜景を楽しむことができます。
かつてここには円形型の回転レストランがありました。芝生の形が円になっているのはその名残です。
オフィスロビーです。エレベーターは2バンク、上層部はホテルということもありオフィスの共用部はそれほど大きくありません。それでも最新へのビルとして洗練された空間となっています。
オフィスへは北側のエスカレーターから入ります。ホテルが南側、商業は久屋大通沿いの西面という動線分離です。
中日ビルは最新の超高層ながらもかつてのビルのようなどこか懐かしさを感じるつくりとなっています。これからも名古屋の中心で人の心をつかみ続ける素晴らしい建物になると思います。