5月26日、名鉄は名古屋駅再開発の事業化を決定したと発表し、予想図を公開しました。この記事ではその概要をお伝えするとともに、中身を徹底分析していきます。
本題へ行く前にこれまでの流れを簡単に振り返ってみましょう。名鉄はわかりにくいホームの改善と老朽化したビル群を再開発するのが長年の懸案であり、2010年代中旬には超高層3棟構成で再開発を行う方針を明らかにしていました。そして2017年3月には高層部は3棟としながらもそれらをスリットでつないだ壁ビル案を発表しました。
その後順調に進んだかに見えましたが2020年にコロナが流行。鉄道事業が大きなダメージを受け、おまけにリニアの延期も確実視される中、名鉄はこのままの事業化は不可能と判断し、いったん計画を見直していました。そして去年あたりには壁ビルはやめて3棟構成とする案が出ていましたが、その後さらに計画を進め、太閤通を挟んで南北2棟を建てる案となりました。
そして今回ついにパースが出てきました。建物のボリュームは今年3月に発表されていたのですが、やはり予想図が出ると一気にイメージがわいてきます。また、新たに高層部のホテルについても詳細が出てきました。
引用名鉄ニュースリリース 名古屋駅地区再開発計画の事業化決定について(PDFファイル、以降の資料も同様)
こちらがそのパースです。かっこいい!本当に素晴らしい計画です!!
設計は日建設計とスキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリルが担当。SOMは超高層ビルに傑作を多く残しているアメリカの一流設計事務所です。特に低層部が南北に長いので壁面を工夫しないと単調になりがちなのが懸念でしたが、ガラスの部分を階段状に不規則に設けることで、飽きのないデザインとしながら内部のアクティビティもわかるような、実に素晴らしいデザインに仕上がったと感じます。
高層部はシンプルなガラスの箱状です。名古屋の超高層ビルにはなかったタイプかと思うのでこれは楽しみです。低層部とは雰囲気が違いますが、うまくマッチしていると感じます。
当初の3棟構成では最も北側に近鉄のホテル棟がありましたが、なくても結構いい感じに思いますね。むしろ2棟構成とすることで太閤通を挟んだゲート状のデザインが明確化され、名駅側からは適度な抜けができます。
その代わり当初ホテル棟だった場所には巨大な屋根と段状の屋上広場のようなものが見えます。どんな空間ができるのかわくわくしてきますね。
名鉄は新ビルによって名古屋駅からささしまライブにつながる新たなスカイラインを形成し、ダイナミックな都市景観を生み出すとしています。名鉄が名古屋のランドスケープをつくる一因となります。
ビルの高さは北棟172m、南棟170mの想定です。これで名駅は170m以上のビルが10棟となり、国内有数のビル群がさらに進化する形です。タワマンがなく、すべてオフィス系というのもすごいです。
構成を見ていきます。まずビル全体の延床面積は52万平米です。これは驚異的な数字です。セントラルタワーズでも42万平米であり、それを凌ぐ数字となります。地方都市では皆無、東京や大阪でもそうそう見られない規模の開発です。
名鉄のプレスによると北棟はオフィス149000平米、商業95000平米、鉄道駅25000平米となっています。その他機械室などもあるでしょうから、北棟は延床320000平米程度と推測されます。
北棟のオフィスは基準階の貸室面積が6000平米のようです。JPタワー名古屋がおよそ2300平米、大名古屋ビルがおよそ2500平米と言えば、その大きさがわかるでしょうか。ちなみに国内首位級の巨大ビルである麻布台ヒルズでも4800平米です。まさに規格外の大きさです。
同時にここからビルの外形寸法もなんとなくわかってきます。レンタブル比75%とすれば純粋な面積は8000平米となります。パースの感じから横幅は150mくらいありそうなので、奥行きは53mくらいと推測できます。
南棟はホテル27000平米、オフィス51000平米、バスターミナル15000平米です。商業の文字がありませんが、1店舗も入らないということはさすがにないと思うので、あとは商業すこしと機械室と駐車場などで、延床は200000平米程度と推測されます。
3月の発表時に駐車場がどうたら言われていましたが、タワーズやJPタワーにも別棟が大きな駐車場があり、今回の名鉄はそれがビルの内部に組み込まれただけで、駐車場が特別大きいとは思いません。(他にも機械室や少しくらいは商業もあると思いますし)
オフィスに関して、北棟が大きすぎて目立ちませんが、南棟も基準階で3300平米もあり、これまでの名古屋のどのオフィスビルよりも大きいです。ちなみに横幅は100mくらいで、平面形状は長方形ではなく、南側に向かってゆるやかにすぼんでいくような形状と推測されます。もともとの敷地形状がそうなっているのと、パース上でオフィスとホテルで少し段差ができているのがポイントです。
そして太閤通の上空付近はこのようになります。南北とも曲線で構成され、太閤通を挟んだシンボリックなゲート性が演出されています。これは完成が楽しみです。
上空にも南北棟をつなぐブリッジが見えます。おそらくこれは名鉄のこだわりポイントです。壁ビル案の時はここも全面スリットが入っていたのを思い出してください。やはり建物を整備する際に南北棟の一体感を演出したいのだと思います。もしかしたら本当はここに屋上庭園くらいつくりたかったのかもしれませんが、設計が進んで現実的な連絡通路的なものに落ち着きました。
とはいえ三越とラシックをつなぐ程度ではなく、ここは長さも高さも全然違います。太閤通という片道何車線もある大通りをまたぐので相当距離がありますし、高さも70mくらいあると考えられます。構造的な難易度は高そうに感じます。
名鉄は、パブリックスペースでもある動線の骨格を外観に表現したとしています。回遊性向上を図り、名駅の南北動線をデザインに表出させるコンセプトが伝わってきます。
名駅通側のパースです。感動とワクワク、癒しにあふれ、時代のトレンドに応じた可変性と当地ならではの地域性を兼ね備えた、歩いて楽しい商業施設の開発を目指すとしています。
このような天井が高いゆとりのある空間はいいですね。今はややせせこましいので、名鉄の最大のターミナルとして、遠方から来た人も感動できるような空間にしてほしいと思います。例えば阪急梅田のような大空間は圧巻です。
コトトキ体験型のエンターテイメント性に富んだ集客施設の導入も明言されています。ビルが完成する頃には従来のような飲食と物販だけでは人が集まらない時代になっている可能性があります。トレンドに合わせたコト消費型の新たな商業施設に期待したいと思います。
屋上広場や屋外テラス、建物内各所に快適なシーティングスペースを配置する等、多彩な滞留
空間を創出するという文もあります。効率一辺倒ではなくゆったりできる空間が多いのもとてもいいと思います。
北東角付近の様子です。ガラスの箱が重なり合い、ところどころにボイド空間見られ、その空隙に人々が吸い込まれるような構成です。今は狭い通路と宝くじの雑多なイメージですが、大きく雰囲気が変わってくるでしょう。
今回の新ビルの顔となる部分は南北の2棟とその中央の太閤通をまたぐ部分なのですが、実は北面もかなり重要です。JRや地下鉄から来た人にとっては最初に目に入る部分だからです。その点このイメージは都会的でわくわくをいざなう大規模商業施設という感じがしてとてもいいです。
名鉄再開発は名古屋市のターミナルスクエア構想ともリンクしてきます。駅前広場と名鉄新ビルがシームレスにつながるようになれば、回遊性の向上と賑わいの創出がさらに進むことになります。
ただ、このパースの特に北側の部分は1期開業時には未完成と推測されます。以前書いたように駅のホームの施工ステップ上、すべてをいっぺんに建てることはできません。まず今の駅の南側にホームをつくって移行、そして4線化の際はちょうど現名鉄百貨店あたりの下を施工する必要があるので、北面が完成するのは一番最後と思われます。
ではその駅に関してみていきます。完成後は3面4線になります。中部国際空港専用のアクセスホームが新しく整備されます。
改札の配置を見ると、最も北側に各交通機関とのスムーズな乗り換えができる改札が設けられるとあります。今は入口専用とか出口専用とかあるので、ストレンジャーを混乱させる一因になっています。拡張するとあるので、ここがメインとなりそうな感じです。また近鉄との取り換えに便利な改札口も設けられます。
注目は地下2階の改札口です。商業などの配置の関係上、地上レベルに改札を設けることが難しかったのだと思われます。そのため、地上の北側の改札口とともに、一度地下2階に降りてからホームに向かうルートも主動線として利用することを想定しているようです。3月にホームからさらに下へ行くパースが出ていましたが、こういうことだったのですね。
その他、駅に関しては新しく出てきた情報がそれほど多くないので、また追加情報を待ちたいと思います。
夜景パースです。南棟の高層棟で照明の色温度がやや低めになっている部分がホテルです。なんとハイアット系の最高級ブランドであるアンダーズが進出します。これには驚きました。多くの方がインターコンチネンタル系と予想していたと思います。そもそもこのタイミングでもうブランドが決定したもの意外でした。
アンダーズは開業が迫るコンラッドとほぼ同格のラグジュアリーに分類されます。日本では虎ノ門ヒルズの1か所しかありません。この名古屋が国内2か所目になります。ハイアットの代表取締役は、名古屋駅再開発計画と名古屋の発展に強くコミットしている名鉄とハイアットは今回が初めての契約であり、同社の大切な計画にハイアットが選ばれ大変光栄に思うとコメントしています。
ホテルは約150室で、全室50平米以上の広々とした客室を用意。レストラン、ルーフトップバー、ラウンジ、宴会場、会議室はもちろん、フィットネス、屋内プール、スパなどの設備も設置されます。
対象となるのは1階、11階~12階、25階~29階とされています。1階は車寄せとエントランス、11階と12階はスカイロビー、25階より上が客室でしょう。これより南側には高層ビルはないため、視線を遮られることのない、すばらしい眺望を持った高層ホテルが誕生しそうです。
ちょうど県と市の補助金も再開しましたし、再開第一号として華々しく認定されることになりそうです。アンダーズの進出は本当にうれしく思います。今後も国際都市名古屋として着実に高級ホテルの数が増えていくといいですね。
最後にスケジュールを確認しておきましょう。名鉄百貨店や近鉄パッセは2026年2月ごろに閉館となります。その後解体工事に着手。そして2027年には新築工事に着手するとし、2033年度に1期が竣工します。そして2040年以降、4線化を含めた2期が竣工します。
ここまでコロナ拡大やリニア延期の影響を受け、計画が決まるまでにはだいぶ時間がかかりましたが、一度工事が動き始めれば完成まではわずか6年であり、今回の規模を踏まえると早いくらいです。(2期はさすがに時間がかかりますが)
名鉄は今回の開発事業で合計8880億円を投入するとしています。わけわからないくらい莫大な額で、ミッドランドスクエアが10棟以上建ちます。(ただし今回は鉄道駅の大改造が入っている点や当時と物価がだいぶ変わっている点に注意が必要です)
ということで名古屋最大の再開発事業はついにその全貌が明らかになりました。デザインに関しては文句なしの完成度、ホテルもアンダーズと最高レベル、屋上庭園や連絡通路などのわくわくポイントも十分で、とにかく素晴らしいの一言です。
正直、コロナ拡大やリニア延期の影響を受けながら、よくここまでのものを仕上げたと心の底から思いました。デザイン的にも壁ビルから見事にブラッシュアップされたと感じます。関係者の方々には本当に敬意を示したいと思います。
あとは規模縮小なくいけるかどうかですが、おそらく名鉄は腹をくくっているでしょう。名古屋を代表する企業として、ここで妥協することはもう考えていないと思います。詳細設計の上で多少デザインなど変更はあるかもしれませんが、規模はこのまま行くと思います。これまでの名鉄の会見や社長の意気込みを見るに、私はそう判断します。
このビルが完成するとき、名古屋は新たな進化を遂げることになるでしょう。完成が本当に楽しみですね!
コメント
それは名鉄再開発計画なら声優の山寺宏一さんは言われていない。
欲を言えば、この高さならやっぱり3本欲しかったですね
また、中層~高層部分はかなりシンプルなので、もう少し攻めたデザインにして欲しかったです
パッと見た感じ、外観が洗練されてて良いなと感じました 。(再開発される品川駅に似てる?)
ただ、空中回路が思っていた以上にシンプルすぎないかなと感じてしまいました。
名鉄ガンバレ!
イメージ図のバスを見ると、バスターミナル部
バスの導線が左回りな感じ?
センターに島式の乗り場設定すれば使い勝手良さそうだが
出入り口部の構造が面倒になりそう
勾配も今よりきつくなりそうだし
この辺、実際はどんな構造なのか早く知りたい
設計はスキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリルとの事、完成された実物を期待しましょう。
言われてみれば納得なデザインですね
多くの世界的な建築をきっちり現地ナイズしながら手掛けてきた事務所ですし本当に期待大です
あまり名駅エリアに無いタイプのデザインなので良いと思います。ホテルがアンダーズなのは予想外でした。
総額8,880億円と報道されていますが、とんでもないビックプロジェクトになってきましたね。
名鉄に続いて他の企業もどんどん名駅周りに投資してもらえたら良いなと思います。
協力の時代になってきていると思うので。
このニュースに関するヤフコメ覗くと
ネガキャンのオンパレードでビックリする
いつもの名古屋人の自虐
他地域からの中傷…
ほんと名古屋に関する話題
真っ当な批判はともかく
この名古屋なら叩くのが当たり前と言う傾向
なんとか出来ないものか
空飛ぶクルマへの対応も頑張ってほしいですね!
愛知は大阪万博でも有名になっている空飛ぶクルマのスカイドライブが豊田市にありますし、TOYOTAも空飛ぶクルマに力を入れています。
新名鉄名古屋駅と空飛ぶクルマとリニアで名古屋をより盛り上げていきたいですね!