再開発における行政の役割と容積率緩和を考える

今回は、三井北館の悲劇以来、ずっと書きたいと思っていた考察記事です。私はこのまま計画が進むことに絶望感と同時に危機感を感じています。少し長くなりますが、名古屋をよりよくするための意見として、どうぞ最後までお付き合いいただけたらと思います。

最悪の結末 三井ビル北館跡地は単独再開発

まずは今回問題にする三井ビル北館跡地の街区について、これまでの経緯をもう一度振り返ってみます。

この街区は西側から三井ビル北館、菱信ビル、白川第三ビルがくっつくように建っていました。北側のミッドランドスクエア、南側のスパイラルタワーズが完成した後もしばらくそのままでしたが、2012年あたりから三井ビル北館の解体が始まりました。

前述したようにここは超の上に超がつく一等地であるため、その後の土地利用が非常に気になるところでした。早めに新ビルを建設するか、将来的な街区一体開発を見込んでとりあえず暫定利用とするか。オーナーである三井不動産が取った選択は後者でした。

続いて白川第三ビルが解体されました。ここもすぐに新ビル建設とはせず、跡地は駐車場になりました。三井ビル北館と同じく将来的な街区一体開発を見込んでいたのでしょう。

そして真ん中の菱信ビルが解体されました。これでいよいよ街区一体開発の準備が整いました。しかし菱信ビルの地権者の一員であるむさし企業は突如、敷地の北面の一部を単独で開発すると発表。昨年5月には2階建てのビルが完成し、テナントとしてコメ兵がオープンしました。

結果として三井は三井ビル北館跡地と菱信ビルの南半分といういびつな敷地で再開発を行うことになりました。

多くの方が感じている通り、戦犯はむさし企業です。リニア開業で名古屋の玄関口としての重要性がますます高まる名駅の超一等地を持っておきながら、自己の利益のみに執着し街並みの整備を破壊するその愚昧なやり方には開いた口がふさがりません。

次に三井について考えてみます。先ほど書いたように三井は将来的に一体開発をするため土地を暫定利用としていました。しかしむさし企業との交渉がうまく行かず単独で開発することになりました。

私は、現時点で単独開発に踏み切るのは早すぎると思います。もちろんいつまでも低層のM4テラスでは土地の高度利用ができず問題ありですが、今は時期ではありません。少し待って一体開発が可能になるのを待つべきではないでしょうか。

大きなビルを建てれば貸しビル事業として現行の計画よりはるかに大きな収益が出るでしょうし、一体開発によって名古屋の玄関口の立派な風格と景観の形成に貢献できます。今のまま計画を進めると「もう少し待てばよりよくなったのに、目先の利益にとびついて失敗した」ということになりかねません。幸いむさし企業のビルは2階建てです。解体しようと思えば1ヶ月で更地にできるでしょう。

そしてもうひとつ、 市は容積率緩和の方針を打ち出しています。リニア開業に向けて老朽化したビルの建て替えをさらに促進し、建物の高層化を促すための措置のようです。

対象となるのは名駅と栄です。このうち名駅で容積率が1300%に緩和されるエリアを見てみましょう。(中日新聞記事などから独自に作成)

これを見ると緩和されるとはいっても対象エリアの半分くらいは既に開発が完了しています。また土地が細分化されすぎて大きな開発が難しいエリアも多く見て取れます。

そんな中、現実的に一体開発の可能なのが名鉄、そして三井北館街区です。ただし名鉄は考えるまでもなく一体開発に決まっています。つまり容積率緩和の措置をまともに受けられるのは三井北館街区しかないのです。

記事によれば容積率緩和は2019年からを予定しているそうです。しかしこの計画は今年6月着工なので、このまま行けばこの緩和措置を受けられない可能性が高いです。

もし敷地は一体開発でなく現行のままだとしても、あと1年は待つべきではないでしょうか。乱暴な計算ですが、現行の容積率1000%で約100mなので、1300%なら約130mにまでできます。

次に名古屋市の姿勢を考えていきます。現在、市は「リニア開業に向けた名駅のまちづくり」を掲げ、名古屋駅の改造やリニア駅上部の土地利用計画を発表するなど、以前と比べて積極的にまちづくりに力を入れている印象があります。

都心部におけるアセス緩和、容積率緩和もその一環です。リニア開業に向けさらなる民間投資を引き出し、老朽化した街の再開発を促すため方策です。

しかしそれだけでは足りません。私は、市が効果的な再開発ができるような調整役をすべきだと考えています。

再開発を促すために規制緩和をするのはいいことです。しかしそれだけでは民間が自分の建てたいビルを好き勝手整備し、結果として街並みが乱れていきます。三井北館街区はまさしくそうなろうとしています。

もちろん民間にも自由があるため行政が過剰に干渉すべきではありませんが、リニア開業に向けて整備すべき超一等地がこの有様では他地方から来た人の笑いものになるでしょう。

行政は土地の集約化、大型開発化を進めるための規制緩和をするだけでなく、地権者同士で合意形成できるような役割を担うべきです。現在の「規制緩和するから、あとはがんばってビル建ててね」という姿勢では街はよくなりません。

栄で容積率が1300%に緩和されるエリアを見てみましょう。(中日新聞記事などから独自に作成)

ここにも同じような案件があります。安藤証券との交渉がうまく行かず再開発がなかなか進まない(それでも2027年を目標という興和の発表はありましたが)国際ホテルの街区です。

ここも行政が介入すべきと考えます。これで一体開発できなかったら何のための容積率緩和なのでしょう。少なくとも1300%に緩和したエリアでは市が調整役にならなければなりません。(左端、三菱東京UFJ銀行名古屋ビルは対象外)

再び三井北館街区の話に戻ります。何度も言いますがここは名古屋の玄関口、超一等地です。何のためのアセス緩和、容積率引き上げなのか、しっかり考えなければなりません。このまま行けばこれらの緩和措置は全く意味がなかったことになります。

賢明な考えがあるならば、三井は計画延期し一体開発が可能になるのを待つ、行政は一体開発に向けて調整をする、むさし企業は即撤退をすべきです。

工事施工者はまだ決まっていません。M4テラス閉鎖のお知らせも出ていません。着工は今年6月、まだ半年あります。

そうです。まだ間に合うのです。無駄かもしれませんが名古屋市のホームページから意見を送信したりすることはできます。このまま計画が進むのだけは絶対に避けなければなりません。

何とか事態が好転することを願うばかりです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

コメント

  1. 匿名 より:

    行政は土地の集約化、大型開発化を進めるための規制緩和をするだけでなく、地権者同士で合意形成できるような役割を担うべきという意見には大賛成です。名古屋は容積率緩和だけで後は事業主任せで知らん顔。それも緩和する調査も判断実施時期も遅すぎる。スピード感をもって「仕事」をして貰いたい。民間マーケットが点開発でなく面開発が必至と提案していても市長も含めて口ばかりで到底、具体的に理解しているとは思えない。1年以上も暫定施設していたエリアを今頃、緩和する。それも2019年度って民間企業ではあり得ない事。名鉄再開発が有る為、三井もしびれを切らして施工せざるおえなかったのでは・・・駅西のリニモの土地交渉ももっと行政として、旗振り役に徹して貰いたいものです。民間会社から見れば、お役所仕事と言われてもしかたないのでは。